最近のつぶやき

今、所用で海外におります。

 しばらくはこちらで過ごすことになります。帰国は年末。

 先週のこと、旅ということで、電池を入れ換えるか、それとも電池交換不要の新しい腕時計に買い換えるか迷った末に、結局電池交換をしてもらいに時計店へ出かけました。

 まあ、そこで無残な光景を目の当たりにしてちょっとショックでしたが、もしかしたら今の日本の縮図のひとつかもしれません。

 ショーケースの金属部分はさびて中は空っぽ、埃だらけ。
 上には無造作に職人の店を示す楯がほったらかしにされているように置かれている。
 横には古くて立派な掛け時計や置時計が積まれて、一番上には、なつかしい鳩時計がふたつ。
 売れ残りの腕時計バンドが埃だらけの袋に入って売れるあても無くぶら下がる。
 それ以外には時計屋であることを思わせるものは何もない。

 かつては腕のいい職人であったであろうおじいさんは、今では暇つぶしの相手はテレビのようでした。

 その足でショッピング街の銀行ATMに行くと、大きなカートに小さなハンドバッグを入れた大きな年配女性が立ち往生をし、横の若い女性が操作を手伝っていました。
 どうも、ページの広がった通帳を差し込もうとして操作不能になったようでした。

 操作再開し、若い女性がしごくように丁寧に通帳を整えて差込み、無事完了。
 で、問題の年配女性は、●●町の○○銀行ならこんなことないのに、と何度も何度もつぶやきながら、カートに体を預けるように押しながらどこかへ去っていきました。

 夫の叔父・叔母に関わることが多いこの頃、町でもお年寄りのちょっとしたハプニングに出会うことが多くなりました。

沖縄の痛みはそっちのけで、稼ぐだけ稼がせてやる、稼ぐだけ稼いでやる

小司 花束S

 誕生日に友人から届いた花束。乳がんの手術から16年の友人ですから、うれしさもひとしおです。
 
 で、今日は誕生日の話でも、友人の話でもありません。

「『これだけ金を払ったから、撤去したんですよ』と示すため」「国会対策としてやった」という、72年の沖縄返還協定で日本が米国に支払うと定められた3億2千万ドルのうち、 核兵器撤去費とされた7千万ドル。

 これが「どんぶり勘定だ」「大蔵省の柏木雄介財務官(当時)との間で『我々だけで振り分けてみたらどうか。うまくやらないとばれる。野党がやたらと言っている核(撤去費)をうんと大きくしろ』と相談した と、当時交渉責任者だった吉野文六・元外務省アメリカ局長が証言したことが伝えられています。

 なんでも、「(核兵器は)日本人が触るようなものではない。(米軍が)港に行って船に載せるだけ。7千万ドルもかかるわけはない」とか。
 

 これを読んで思い出したのが、2007年の春、森田実さんの講演会で聞いた話です。

 米軍のグアム移転に際して、建設費の60%を日本側に負担させるという話。

 国外の土地に基地建設するための費用をアメリカ以外で負担するのは、世界中で日本だけということでしたが、その内容も、もうムチャクチャ。

 グアムに建設する米軍住居建設費用の日本側負担は、一戸あたり 72万ドル
 米国国内でこの住宅建設の入札を行うと、1戸あたり17万ドルですむというのにです。

 実際の建設費の実に4倍以上の費用を日本はアメリカに提供するわけです。

 アメリカの友人にひどいじゃないか、と伝えると、いや、もっとやってくれと日本側が言うのだ、という返答がある、と森田さんは言われてました。

 で、2007年8月2日の「琉球新報」では、「米軍グアム移転 10年までに企業選定」という見出しで、防衛省がグアムで予定されている施設やインフラ整備などの工事受注を希望する企業を 集め、初の説明会を開いたことが報じられています。

 それによると、

08年夏から10年夏までに受注企業を決定して合意文書を締結、着工。

・日本側が整備する施設のうち、家族住宅は平屋から3階建てまでの3500戸程度。
 施設の建設だけでなく毎年、維持管理をすることが受注の条件

・普天間移設に関係なくグアム移転の整備事業は進めるが、着工の段階で普天間が動いていなければ在沖海兵隊も移転できず、グアムでの工事に影響が出る可能性がある。


 普天間問題を早く片付けろ! という声の背景のひとつに、こんなことがあるんですね。
 沖縄の痛みはそっちのけで、稼ぐだけ稼がせてやる、稼ぐだけ稼いでやる、という話です。

 とりあえず今日は、気づいたことだけ。

 日本はいったい、核兵器をいくつ作れるのか?

最近気になったニュースのひとつ。

 日本はいったい、核兵器をいくつ作れるのか?

 もう少し丁寧にいうと、既存の原子力発電所、核燃料、プルトニウムなど、すべて核兵器に転用するとしたら、現在の日本はどれだけの核兵器を作る力を持っているのか、というもの。

 驚くなかれ、北朝鮮:10個、中国:1200個に対して、日本は9650個

 核兵器製造の潜在能力は、ロシア、アメリカ、イギリス、フランスについで日本は世界第5位とは、予想を遙かに超えていました。

 狭い日本、そんなに空港作ってどうするの? と同様に、核兵器、そんなに作れてどうするの? ですね。

 で、解せないのが、これまでどれだけ原子力発電所の建設・運営について反対の声が大きくなっても、けっして受け入れることがなかったこと。
 反対意見を聞く耳さえなかったこと。今でもないこと。
 いったい、どんな意図と意思で、この原発推進が実行されているのか、と疑問は大きくなります。

 80年代、「原発ジプシー」と呼ばれた人たちの存在が大きな社会問題になりかけましたが、いつの間にかすっかり聞かなくなりました。でも、放射能にさらされながら碌な防御態勢もなく危険な仕事に従事している人たちは現在でもいるはず。

 原子力発電の問題については、Rolling beanさんわこさんがずっと追跡されてますね。

とほほさんのこと

いろいろ重なってあわただしいところを、ちょっと一息ついたので更新しようと思って見てみると、前回の記事は10日前でした。(>_<)

 お玉さんせとともこさん喜八さんも記事に書かれてますが、とほほさんが亡くなられてしまいました。知ったのは28日のこと。やっぱり、信じられませんでした。
 最後になってしまった質問のお返事がなかったので、おかしいな、とは感じてましたが。

 まだお会いしたことはないのですが、おしゃべりの相手は結構していただいていて、そのうち広島に行くかもしれないから、その時にはお目にかかろう、と思っていた矢先のこと。

 理に合わないことは頑として受け入れず、議論好きどころか喧嘩好きなどといった評もある方ですが、私にとってはお茶目な印象ばかりが残っています。
 時々、ちらり、きらりと皮肉も交えて蘊蓄を披露するのも楽しかったし、教えられることも多かった。

 この人は、生き急いでいるのでは? 自分で自分の命を縮めているのではないだろうか、と感じることもたびたびでした。

 あれは『ヴェルヘルム・マイステルの修業時代』でミニヨンが歌った詩でしょうか。

 涙とともにパンを食べたことのないもの、眠れぬ夜を過ごしたことのないものには、人生の味は分からない、というような言葉は。

 この、くさいほどのロマン派の心情を謳いあげた1行を思い出したとき、私がとほほさんを連想してしまったのはそうそう的外れでもないと思うのですが。

 あの頑固さと理詰めの奧には、こんな熱いロマン派の思いが煮えたぎっていたのではないか、と今さらにして思います。それが時々、お茶目な装いでチラッと表に出たり……
 
 とほほさん、安らかにお眠りください。

人生の秋


とうがん  ← 我が家の庭で、ゴミから生まれて育ったとうがん。全長30cmほどになってます。
 店先に並んでいる冬瓜からは想像も付きませんが、びっしり生えているトゲトゲが痛くて、素手で持つのは辛いほど。
                           柿の葉っぱ
 
             ↑ これまた我が家の庭でみつけた柿の葉っぱ。色づき具合がおもしろくて、思わずパチリ。

「秋」という言葉はいろいろと比喩にも使われていて、近頃しみじみ思うのが「人生の秋」。私もそんな歳になったということでしょう。

 私の信頼している友人の1人が、乳がんの手術から16年目の今、言い様のないほどきついと、ずっと伏せったままです。今年の2月、入院してたまった腹水を抜き、ちょっと持ち直したかに見えましたが、10月に入って、また腹水がたまっているらしいのです。

 16年前の手術前にはすでに肺に転移していましたし、その後は脳腫瘍もでき、いろいろなところにも転移して、その都度放射線を当てたりして、それも自転車で通院して放射線療法を受けたりして、何度も何度も命拾いをして、好きなバドミントンやら旅行やらして、これまでやってきたのです。
          
 その彼女が、とてもだるくてきつい、と。
 しかたないやろ……という彼女の言葉を思い出すと、なんだか涙がこみ上げてきます。
 
 そんな彼女が「……まあくよくよしても仕方ないので何とか乗り越えようと思っています。家にこもっている時に本を多いに読みました。映画館にも通いました。それなりに楽しんでいます」というメールをくれました。

 いつも逆に励ましてくれる友人です。

カラタチのとげとアオガエルの生食

ははははは、と家人と大笑い……お口汚し、うん? お耳汚し、お目汚し……なんといえばいいのか、まあ、どちらにしても大した話ではありませんが、昔の日本人の姿が垣間見えるような。。

 ゆず胡椒を作るために、家人が黄色くならないうちにと思ってゆずの実を採っていると、通りかかったご近所さん。ゆずのとげからカラタチのとげを連想したようで、

「昔は、脱腸の人にカラタチのとげを使ったですもんね」。

 びっくりすると、こういう話でした。

「友達が、カラタチがあるなら、うちの妹が脱腸だからとげを持ってきて、というから持っていったら、その妹さんが出てきて、それを見ると、みるみる間に顔が歪んでねえ」

 という話でした。カラタチのとげをどうするの? と訊きましたが、分からないという返事でした。
 ゆずのとげの数倍の長さはあるカラタチのとげを、いったいどうしたんでしょうね。
 針治療にでも使ったんでしょうか?
 消毒でもしないと、かえって感染が心配じゃないかしら、と思ったりしますが。


 もうひとつは、やはり友人の妹さんが卵巣ガンになったときのこと。

 ねえちゃん、蛙を捕ってきて、と言われてガラス瓶にいっぱい詰めて入院している妹さんに持っていったそうです。

「蛙と言っても、ほら、こんなにちっちゃいアオガエルよ。
 それを瓶いっぱいにして持っていったら、一日一匹でいいんだから、そんなに要らない、と怒られてね」

 で、蛙の何がいいのかというと、あのアオガエルを生きたまま食べるとガンが治るのだそうです。
 きっと、そのまま呑み込むのでしょうが……。寄生虫は大丈夫なのかしら?

 
 ちなみに、カラタチのとげの妹さんは当時10歳ですから、戦前の話。
 アオガエルの妹さんの方は残念ながら亡くなられたそうですが、そうそう昔の話ではなさそう。少なくとも大人になってからの話ですから、戦後のことです。

 迷信だ、と言って笑うのは簡単ですが、藁をもすがる思いで、庶民が病から逃れようと苦心惨憺した記憶です。

 こんな庶民の対極にある発想かな? と感じたのが、昨日の米abcニュースで見た生命保険の売買。

 院内感染で両足を失って車いすで診療している黒人医師が、医学部に通う3人の子どもの学費捻出ために、証券化されている自分の生命保険を売った話です。

 そしてウォール街も、この生命保険の売買に関心を寄せているという話。

 保険金額に比べて買い取り金額はごくわずかなものでした。

 サブプライム問題の後も懲りずに、あらたな手口を見つけた、というところでしょうか。
 
 とげとアオガエルに見られる浅はかとはいえ命への生々しい執念に対して、こちらは何ともあからさまな他人の命への割り切りよう。人の命を金儲けの手段としか見ないのか、と思わず慨嘆しました。まあ、アメリカでもニュースで流すほどですから、違和感があるのでしょうが。

 
 根性ゆり  ← 「根性ゆり」。我が家近くで発見。

抽象的な逆偶像を作り上げて、ありったけの憎悪をぶつけていることに気づいてない

う〜ん、ショックです。今の日本でこんなことがあるなんて。

 西村某氏とか桜井某氏とか、ときどき耳にしていましたが、ひどい、のひと言です。

「白昼の秋葉原で、外国人参政権反対のデモ隊がデモ批判者を集団殴打」とニュース・スパイラル。
はなゆーさんも、やつらださんも書いてますね。

 ナチス突撃隊がこんな風だったのでしょうか?!

 ありったけの憎悪を込めて、叫び、腕を振りあげてます。
 こんなおぞましい憎しみの感情が、どうやって生まれたのでしょう。

 だって、おかしいでしょ。

 憎悪する相手から、自分自身は、いったいどんな酷い目にあったの言うのかしら?

 現実に、彼らが毛嫌いする人たちが、どんなことをしたというのかしら?

 自分がよく知っている人、ひとりひとりの顔を浮かべて物事を考えていたら、腕を振り上げたり、杖で打ち付けたりはできないでしょ?

 もしかしたら、生まれてからこの方、家庭や学校や社会で出会った嫌な出来事への嫌悪を、すべて、この腕のひと振りひと振りに込めていたのかしら? 
 だとしたら、相手が違うでしょ。
 
 漠然とした、抽象的な逆偶像(と命名)を作り上げて、憎しみを総動員して、目の前の、現実の人間にぶつける、そんな気がします。

 ぶつけやすい人にぶつけるんです。

 本人たちはそれでカタルシスしたつもりかもしれないけれど。
 簡単には目が覚めそうにないですね。
 目が覚める前に、社会的にも法的にも、問題でしょう。

八ツ場ダムと松原・下筌ダム+高齢者のこと

八ツ場ダムのやらせ報道が話題になってましたね。
 昨春のガソリン税暫定税率失効の際にメディア上で大騒ぎになったことを思い出します。あのとき、暫定税率復活を唱え、ピンクの法被を着てテレビ画面に大写しになった女性たちもいましたが。

 単純に考えても、ダム建設に反対する人、つまりダム建設中止に賛成する人は一人や二人ではないでしょうに、その方たちの声はどうなっているのかしら、と思ってしまいます。

 ダム問題というと、私にはどうしても松原下筌ダムのことが思い出されます。

 これは、いまだに水害の記憶が折に触れて語られる昭和28年の豪雨の後に計画されたものですが、かの激烈な“蜂の巣城”闘争で反対派住民が建設省(当時)が真っ正面からぶつかりながらも着工から14年目には完成を見ています。

 この室原知幸さんの蜂の巣城を根城にした反対闘争と経緯については松下竜一さんの『砦に拠る』に詳しいのですが、今我が家の書棚を捜しても見つかりません。ので、記憶違いがあるかもしれませんが、たしか当時建設省松原・下筌ダム工事事務所用地課長として赴任した前北九州市長末吉興一氏が現地の女性と結婚したことが建設推進の大きな力になっていくんですよね。

(同書を読んだ若き日の私にとって、この箇所の記述はショッキングでした。でも、思えば、東大出の若きエリートが、おらが村の村長さんの娘さんと結ばれるというのは、大変なことだったのでしょうね)。

 同時に、この両ダムが建設に成功したことが末吉氏の大きな手柄になったことも想像に難くないわけですが。

 wikiには、この両ダム完成後「より水没地域に配慮した法整備が行われ」「ダム建設が地元の合意がない限り着工されない傾向がより顕著となった」とあります。

 それにしてもです、水没地区の女性と結婚するという策を用いてでも建設着工にこぎ着ける建設省官僚が、法整備ゆえとはいえ、なぜ50年以上にもわたってダム本体の建設に着工できないのか、不思議です。

 各種法整備を進めながら、国と官僚たちは何が何でも建設着工という方針を変更したのかしら?
 

 さて、鳩山総理の国連演説など、世の中は確かに新政権の下で動き始めたわけですが、我が家の目下の話題は高齢者問題。

 高齢者といっても身内、はやくいえば夫の叔父のこと。
 もっとも私たちの関心と活動の的は夫婦それぞれもっと別なところにあるのですが、私たち夫婦だけでなく親族一同の目の前にどーんと存在する問題で、無視できない、といったところです。

 それまで身の回りの世話は全て妻に頼る一方でその妻に君臨してきた米寿近くの高齢男性が一人で生活することがどれだけ大変か、これまでも見てはきましが、水害にあって住み慣れた家を離れ、問題はいっそう深刻になってきました。

 幸い経済的には困らないので、設備の整った食事付き「住宅型」老人ホームでの悠々快適生活を周囲は期待していましたし、そうした生活を送って満足しているお年寄りは大勢いるのですが、叔父の場合はそうはなりません。

 人間の“業”を思わせる言動は、多分、認知症の始まりでしょう。
 私たち周囲の人間の肝を冷やし、時には呆れ怒らせたりしたかと思うと、「この間はすまんかった」と穏やかな声で謝ったりと、まあ、いろいろです。

 考えてみれば、私たちの結婚当初から身内の年寄り問題は目の前にぶら下がっていたわけです。
 明治生まれの親にとって、息子とその配偶者への関心は、ただただ自分たちの老後の面倒をどれだけみれるか、みてもらえるか、ということに尽きます。

 息子の学歴と就職先への関心はこれで収入が決まったからですし、息子の結婚相手への関心は、その人間性というか、性格に向けられ、高学歴が敬遠されたのは、ひたすら我が身の老後を託すのに心配ないか、ただそれだけのことでした。
 おかしいですね、明治のおんなは、高学歴女性は自分を見下し、ろくに世話をしてくれないのではないか、と不安に駆られていたのです。

 気づいてみれば、ご近所のお年寄りには人に馬鹿にされることを必要以上に恐れている人が多かったですね。
 自己主張とか自分の意見とかを表明する前に、女だとか、学歴だとか、その他のことで馬鹿にされる世の中で生活をしてきたのでしょう。

 高齢者といえば、先日郵便局に行くと、隣の窓口で高齢の女性がしきりと何かを訴えています。

 じゃあ、ゆっくりと休まれたらいいですね。
 あっ、眠れないんですか…… 
 
 などと若い女性局員は応対していましたが、おばあさんの方はかなり深刻な様子。
 他に相談する人はいないのかしら? と思いながら郵便局を出ましたが、認知症かもしれません。

 お年寄りといえば、いつか虎の子かなんだか分かりませんが、50万を郵便局におろしに来た女性。
 うれしそうに、幾度となく50万、50万と口にします。応対する若い局員が当惑するにもかかわらず、狭い郵便局内には「50万」の声が響き渡ります。

 その50万を木綿の巾着袋に入れ、紐を手首にからめて郵便局を出て往来を行く小柄なおばあさんの後ろ姿を眺めながら、どうかひったくりなどに遭いませんように! と祈らずにはいられませんでした。

 友人の一人は90になる義理のお姉さんの銀行通いにはいつも同行していますが、分かりますね。同行できないときは、タクシーで帰ってくるんですよ、と何度も言い含めるようです。

 我が家周辺も、しばらく高齢者問題で悩まされそうです。

一日一日を、地道に精一杯生きる人たちのために

知り合いの女性たちを思い浮かべながら、ふと、思ったこと。

 やっていることも好きなことも、本当にさまざまだけれど、毎日毎日を地道に生きてます。

 優しくて働き者だけれど少々昔気質の夫を持つ友人は、買い物かごを下げてスーパーと市場へ出かけるのが日課の、ごく普通の‘昭和’然とした主婦。
 難しいことはわからんのよ、と言いながら、意見の押し売りをするでも、人を押しのけて我意を通すでもなく、明るく笑いながら、時々弱気になったり理不尽なことに眉をひそめたりして、一日一日を精一杯過ごしてます。

 かつてこの人の知り合いが私に金銭的な迷惑をかけることがありました。
 当の私は、仕方ない、と早々に諦めてしまったのですが、友人の方はとても苦にしていたようで、そのことを私は後から知ることとなりました。

 働いている男性から見たら○万円は笑うような額かもしれませんが、主婦にとっては大金です。
 彼女は2年間、取り立てのために知人のところにたびたび通い、ある程度まとまった額になったところで私のところへ返しにやってきたのです。

「500円しか貰えんこともあったし……ほんとうに申し訳ないけど、これでこらえて」と言って。

 その言葉に嘘がないことは、日頃からのつきあいで分かります。貸した額の何分の一しかなくてもです。

 結局、ありがたくそれをいただき、そのうちの半分ほどをそちらのお嬢さんの出産祝いに渡したのが私の気持ちでした。
 
 とりたてて良識派というのでもなく、あえていえば常識派でしょうか。
 大声は出しません。好き嫌いもあまり表に出さず、怒りを見せることはまれ。
 変革とか革新とかは胡散臭い目で見る、保守的な傾向があります。
 
 でも、まじめで、善人。信用のおける人。
 愛すべき人だと思います。

 こんな人、私たちの周りに多くないですか?

 かつてコイズミ政権下で、こうした人たちも“B層”と呼ばれたんですよね。
 
 こんな地に足のついた地味な市井の人たちをバカにしたことが、今回の自民党の惨敗、政権交代につながったのだと思ってます。

 今日からの民主党の政府には、こうした人たちの声なき声を大切にしてほしいですね。


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『路』

ユルマズ・ギュネイという名をご存じでしょうか?

 知る人ぞ知るトルコの映画監督ですが、鋭い体制批判のためにたびたび投獄されて、亡命先のパリで、もう20年以上も前に亡くなっています。

 滅多に映画を見ない私が、衝撃を受けた彼の作品が『路』。

     guneymichi.jpg

 仮出所が許されて、5人の男が監獄島を出るところから映画は始まりました、確か。

 その中のひとりが、この写真 ↑ の男。
 過酷な運命が待ち受ける5人の中でもとりわけ酷い決断と実行を自らの身に迫られました。

 夫の入獄中生活の糧を売るために売春窟で働き、見つかって実家に戻され、満足に食事も与えられずに何ヶ月も足かせをはめられて弱り切った妻を背負い、オオカミの遠吠えが聞こえる雪深い荒野を行きます。
 家名を汚した妻を捨て、殺すためです。
 無慈悲な法を甘受せざるを得ない酷さは、妻だけでなく、夫も同じ。

 もう一人の男は、妻の家族に命を狙われて妻とともに列車で逃げ、二人でトイレの中で愛し合おうとするのを乗客に見つかり、リンチにあいそうになります。

 このとき二人をぐるりと囲む乗客の白い目が強烈でした。

 雪山に妻を捨てに行った男がどうしても妻を置き去りにできずに、再び背負ってもと来た道を帰ったのは救われますが、結局、帰り着いたときには彼女は夫の背中で凍死していました。。

 やつらださんの「昭和性風俗史」を読んで真っ先に思い出したのが、やっぱりこのギュネイの『路』。

 それに、セクシーすぎるということでグランドピアノの足にカバーをしたとか、ロンドンの人口の1割は売春婦だった(いつか本で読んだこの数字は未だに信じ切れないのですが)とか、はなはだ欺瞞的なあのビクトリア朝のイギリスの例をもちだすまでもなく、我が日本も目を覆いたくなるような事例に事欠かないようです。

 ことさら性道徳が人や家族を縛る一方で非情な性産業が法的裏付けを与えられ、苦界に沈む女性が後を絶たなかったのでしょうね。ひどいもんです。

 また、性道徳が潔癖性を要求するのと同時に性産業が繁盛しているのは、なにやら象徴的で、示唆的です。

   
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