暴力をふるう政権と戦闘警察の前に、抗議する人々はあまりに無力、狡猾なグローバル企業の前で、アフリカの子どもたちはあまりに無防備

<韓国>米国産牛肉輸入反対デモが過激化…メディア襲撃も
6月28日19時3分配信 毎日新聞

と書いてハムニダさんを怒らせた日本の新聞。29日の朝日では「牛肉問題 暴徒、新聞社を襲撃」です。

 襲撃された新聞社とはイ・ミョンバク政権に理解を示す保守系有力紙の一つ、東亜日報で、「機動隊が厳重警戒にあたったいが……警察側は放水で応戦し、深夜まで攻防が続いた」等と伝えています。
 
 BBCのサイトでもこの韓国のデモについてエントリーがあり、こちらの方が日本の新聞よりはるかに事実に即して書かれているのではないか、と思いました。

 放水なんていう生やさしいものじゃない、「水大砲だ」と怒るのは、現地で生活をしているハムニダさん。BBCもwater cannon 水大砲と表現しています。

 見出し部分には「韓国警察は、首都のソウルでアメリカ牛の輸入再開に抗議する何千という民衆を追い払うために水大砲を使ってきた」と太字で。

 掲載されている動画は、この水大砲を浴びせる様子を追っています。

で、

・プラカードの中には、「我々にアメリカ軍はいらない、狂牛病のアメリカ牛もいらない」と書かれたものがあること
・米国政府の要求に屈して国民の健康を軽視する政府へのソウルの民衆の怒りは治まらず大きなままであること
・アメリカ牛は安全だ。そのうち韓国の人々もそのことを分かってくれる、と訪韓したライス長官が語ったその日にデモが起きたこと

 等々を伝えています。

暴力行為を行っているのはどっちだ?」と、この日ソウルで起こったことを、さらにその後、どんなことが起こったか、ハムニダさんが「2008年のロウソク集会と1980年の光州事件」で知らせてくれました。

 記事中のリンク先に飛ぶと、警棒を振り上げて女子学生を殴打する機動隊戦闘警察官の姿までありました……何といえばいいのか……。



 同じ日のBBCに、ロンドンに本社のある英国大手タバコ会社が、アフリカで、日本でいえば小学生にあたる子どもたちにタバコを売っていることを報じる記事がありました。

 舞台はアフリカ。ナイジェリア、マラウィ、マウリチウス等の国々。
 BBC TWO(BBCテレビにはONEとTWOがある)のThis Worldという番組のスタッフが調べたようです。

 問題の企業は、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)。
 日本支社もあります。

 年齢チェックがなしも同然の音楽イベントを後援。
 そんなイベントでは有名人がタバコのブランド名をつけた品物を身につけて登場したり、豪華賞品がもらえる競技会で若者を釣ったりして、タバコの魅力をアピール。
 タバコをやるのはカッコイイ、と子どもたちに思わせるのでしょうね。

 1箱では買えない子どもたちのために、1本でも買えるばら売りまで。

 小売商にはかなりの額の販促金を配り、ご丁寧に店舗をタバコのパッケージと同色に塗る、等々、あの手この手で、喫煙が今でもタブーとされていたりしてタバコの味を知らなかったアフリカの人たちに、それも子どもたちにまでタバコを売りまくるわけです。

 1本売りは奨励してません、ご指摘の件については調査いたします、のようなことをBATはいうわけですが。
 
 だいたいマウリチウスではタバコの宣伝は禁止されているというのに、そんなことどこ吹く風。
 その結果、心臓外科医がこの国でタバコに関係した疾病にかかる人が非常に多いと報告し、WHOは、現在アフリカで喫煙に関係すると見られる死亡数は1年で10万件であるが、これからの20年間で倍増すると予測。

 BBCのスタッフは、英国企業の許しがたい側面だ、と怒ってます。

 狡猾なグローバル企業の前に、あまりに無防備なアフリカの子どもたち。

 BAT日本法人のHPにも、「企業の社会的責任」が謳われ、次のマークで未成年者の喫煙防止に「(社)日本たばこ協会と連携して取り組んでいる」と言ってます。
 
            未成年喫煙防止

 こうした企業側の行動規範が、アフリカでは簡単に破られている、それも破っているのは英国企業だ、とBBCは怒るわけです。

 しかし、日本とこのアフリカの国々、どこが違う?と問えば、大して違わない、という答えが返ってくるかもしれません。
 ばら売りこそはないけれど、未成年の喫煙防止に取り組んでいるかもしれないけれど。

            
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  築地移転


 7月12日の築地市場移転反対デモが盛り上がってほしい。

 こんな風だったらいいなあ。こんなのもあるけれど、子どもも参加できる様に準備が進められています。デモ当日は、プラカードなど持ち寄って楽しく参加しましょう、とのことです。 

私たちの国は、いったいどうなっているの? そしてダルフールのことも

防衛省、年金、米軍基地、食料……挙げていけばきりがないほど大きな問題が次々に発覚ところにもってきて、最新鋭の艦船が小さな漁船もよけられずに衝突……いったい私たちの国はどうなっているの?!

 改革するゾ、の声になびいて黄色い鬨の声をあげながらどこかあっけらかんとしてその後にやってくる地獄のことに思いが至らなかったコイズミ時代。
 国民の生活は後まわしにして首相の理念が突っ走り、空回りしながらも復古主義の目的へ向かって足を踏み出したアベ晋三時代。

 無為無策、ひたすら模様眺め、洞ヶ峠で昼寝をする現在のフクダ政権。昼寝をしながら、指示待ちなのかもしれません。どこからの指示って、アメリカとかヨーロッパとかの。

 その一方で、私たちの国は、これまでいろいろと繕ってきたものが、がらがらと音を立てて崩れていくようです。
 いったいどうなってしまうのでしょう?
 イライラと不安を募らせるのは、私だけではないはず。
 選挙を中心にして政治が周っていく露骨さにも、いい加減に愛想を尽かしたくなりますし。

 さて、ちょっと前になりますが、有名なアメリカの映画監督スピルバーグ氏が北京オリンピックの芸術顧問を辞退したニュースが流れたのを覚えておいででしょうか。
 
 スーダン・ダルフール地方で民族浄化(大量虐殺・レイプ・略奪)作戦が現政権の支援で行われていて、それに中国から輸入された武器が使われ、また中国がどんどんスーダン政府へ影響力を強めていることから、圧力をかけることも含めて、スピルバーグ氏は批判の意思表示をしたようです。

 以前から国連は、このイスラム教徒による民族浄化を大きな人道上の問題のとみなしてきたようですが、常任理事国の一つが中国であることから、ことがなかなか進まないのだ、という説明がよくなされています。

 以下に記すBBCの二つの記事もスーダンと中国の関係に懸念を示しています。
 確かにそうなのでしょうが、もうひとつ、気になるものを見つけました。

“オマル・アル=バシル大統領率いる現政権からものを買う、つまりスーダンから原油を輸入することは、この民族浄化に手を貸すことになる。けしからん”という理屈からすると、スーダンの惨状に対する責任はどうも中国だけでなく私たちの国にもあるらしい、ということを知ったのです。 

 アフリカ、スーダンと言っても私たち日本人にはなじみが薄く、ピンときませんが、国際社会では大きな問題になっています。
 どういうことかというと、同国ダルフール地方で、アラブ系のバシル政権が支援する武装集団が非アラブ系住民の地 元民に対して襲撃、略奪、殺人を繰り返し、最近3年間で既に18万人もの犠牲が出ている、というのです。
 そしてアメリカ Parade 誌による世界独裁者ランキングでは長らく第1位の座を、このバシル大統領が獲得していたそうですが、今年は金正日首席が第1位に躍り出たのだという話しです。

 常任理事国の中国は、スーダン政府と石油採掘利 権で強い関係があり、スーダン政府に軍事支援もしているといわれています。

 ところがこちらを見ると、スーダンのバシル政権とは日本もかなり強い関係を持っていて、日本政府が「イギリス議員と人権グループからの圧力を受けてスーダン原油の輸入禁止を検討している」と報じられてるのが、昨年の12月7日のことなのです。
 スーダン・トリビューンには、「スーダン原油の最大の輸出国は中国ではなく日本だ」とありますし。

 ということはこの時点では確かに私たちの国も間接的ではあってもダルフールでの大虐殺に責任があるということでしょう? 中国の問題とばかり考えていると、ちゃんとこちらにはね返ってくる……
 
 このSUDAN DIVESTMENT UKの記事はダルフール・ニュースで訳されています。

日本はダルフールに変化をもたらすためその経済影響力を行使しなければならない。そしてスーダンとのその石油貿易はハルツームへの本当の圧力を振るうために力となる

 と、イギリスの主要政党と議員たちの連盟で、昨年9月と10月に日本の首相宛に懸念を表明する書簡を送ったそうです。

 イギリスからの要請を受けてやっと動き出す。
 もちろん何もしないよりもいいわけですが、国際的にはずいぶん以前から問題になっているのですから、ここで要請に応えて対策を練るのであれば、もっと前からするべきことがあっただろう、と思います。

 で、さて、中国とスーダンとの関係を伝える14日のBBCニュースが以下です。

中国とスーダンは自然なパートナー?

ハルツームをぶらぶらしていると、中国にいるような気分になりそうなときがある

どこもかしこも建築工事中だが、多くの建物には極めて大きな中国風の特徴があるのだ。

それに、旧正月以来今だに、あちらこちらに朱塗りのアーチや提灯が見える。

バスは中国製だし、一部のポスターも中国製だ。

けれど中国人はほとんど目につかない。外出はするな、と指示されているようだ。

もちろん、BBCニュースのインタビューは受けたがらない。

私たちは、青ナイルを見渡せるすばらしい立地の中国国営石油会社の本社へ立ち寄った。

広報担当長はスーダン人だが、インタビューに応じてくれた。

私たちはビルの正面に立っていて、彼がちょうど2度目の質問に答えてくれていたその時、窓の一つから大きな怒鳴り声が聞こえた。

彼はあわてて立ち去り、数秒後に戻ってきた。

「申し訳ありません。話しをするな、と言われました」ときまり悪そうに話す。「誰が?」「中国人です」

はかりしれない影響力

ここでは秘密はいつものことらしい。胡錦涛首席が昨年やって来て、スーダン大統領オマール・バシルと、どうやら広範囲に及ぶと思しき協定を結んだ――詳細は明らかにされていない。

当然のことながら、この二国間の関係は、ダルフール紛争のせいで厳しい目に晒されているが、この種の秘密は中国のあら探しする人の標的になりやすい。

米国には、左派から宗教右派まで、ダルフール問題に絞った幅広い活動家やグループがある。

今ではそこに、スティーブン・スピルバーグや多くのノーベル賞受賞者やオリンピックのゴールドメダリストたちが加わる。

みな、スーダン政府に大虐殺を思いとどまらせるために、中国ははかりしれない影響力をここで使う必要がある、と語る。

米国政府は、本国のダルフール・ロビーに促されて、スーダンに対する制裁措置をとった。

またダルフール・ロビーは、アラブ人武装集団、ジャンジャウィードの手になる大虐殺はまさにジェノサイドだ、と主張している。

ノーベル賞受賞者たち

けれどスーダン政府には、ダルフールの大虐殺を止める力が実際あるのか?

ここの政府の役人でさえも、ジャンジャウィードがスーダン政府から早い時期に支援を受けたことは否定しがたいと分かるが、スーダン政府は内戦における武器としてジャンジャウィードを使ったのだ。

ところが政府の役人たちは、ダルフールにおける暴力は単に無法状態の中での強盗にすぎない、と主張する。ハルツームの当局では、ジャンジャウィードを管理下に置くための軍隊にも事欠くと言われている。

これは新たな国際部隊、国連・AU合同ミッション(UNAMID)だけが実行できる仕事だ。

まあ、もちろん、ハルツーム政府の場合は、アーメド・ハルーンに、つまり国際刑事裁判所に人道に対する罪で指名手配されている男に閣僚職を与えていなかったら、もっと説得力があっただろうに。
また、ジャンジャウィードのリーダー、ムサ・ヒラルを特別顧問に任命していなかったら、もっと説得力があっただろうに。 

今だに、米国、ノーベル賞受賞者たちやスティーブン・スピルバーグと比べて多くの西側諸国の外交官たちのスーダンと中国人とを見る目が少々甘いのに出くわす。

彼等の見方では、中国はゆっくりと変わりつつあることから、国際社会と協力するためにはスーダンを説得するのが望ましいと分かるだろうということだ。

さらに、米国人を含めて西側諸国の方へ戻っても、スーダンにとって必ずしもはいいとは限らない。

「西側はスーダンにとって、中国よりも自然なパートナーだ」とさる外交官は言った。「おおかたのスーダン人は分かっているよ」。

まあ、そうかもしれないが、確かに中国はスーダンに足跡を残すことに忙しい。
(BBCニュース 2月14日)

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追記;スピルバーグ監督の北京オリンピック芸術顧問辞任のニュース

中国 スピルバーグの行動に"遺憾"

中国は、映画監督スティーブン・スピルバーグのダルフール問題をめぐる北京オリンピック芸術顧問辞任の決意に遺憾の意を表明

中国外相は、オリンピックとスーダンを結びつけた批判の裏には「隠れた動機」が潜んでいる可能性がある、と語った。

同監督は、役にとどまり続けることは自分の良心がどうしても許さない、と述べた。

中国はスーダンと経済的・軍事的な強い結びつきをもっていることから、ダルフールの危機を解決するために中国はハルツームのスーダン政府に圧力をかけるべきだ、と活動家たちは主張する。

さる英国紙が、ノーベル賞受賞者、およびアーティスト80人が名を連ねた、紛争終結への助力を北京の中国政府に要請する手紙を公表した。

「中身のない美辞麗句」

中国外務省報道官の劉建超(Liu Jianchao)は、「我々は、中国とダルフールに絡んで数多くの論争や活動が続いていることに留意してきた。

 ダルフールに対する中国政府の政策を理解しない人がいたとしても理解できるが、一部には隠された動機も考えられ、これは容認できない」と記者会見で語った。

「中国は同時にダルフールにおける人道的状況に関心がある。しかし、中味のない美辞麗句は役に立たない。我々は、関係諸氏がもっと実際的になることを望む」

オリンピックに関しては
顧問にはチャン・イーモウ監督とカンフー・スター、ジャッキー・チェン等の著名人の名前も含まれる。
ハリウッドスター、ミア・ファローとジョージ・クローニーがダルフールをめぐって中国を批判してきた。

 

  北京政権は、ダルフールへの特使を任命し、同地域へ平和維持軍を送った。が、スティーブン・スピルバーグを含めて多くが、不十分だと言う、と説明した。

少なくともスーダン、ダルフール地方の5年間の紛争では20万の人が死亡し、200万が自分の家から追い立てられ、広範囲に及ぶ残虐行為で親政府の民兵が非難された。

スーダン政府はジャンジャウィードの民兵の後押しを否定し、ダルフールの被害は誇張されてきたのだ、と主張する。

スーダンが原油産出量の約2/3を北京政府に売る一方で、北京政府は武器をスーダン政府に売り、国連安保理がハルツーム政権に圧力をかけようとする取り組みを阻んできた。

ダルフールで使われてきた武器は、中国がスーダン政府にに売ったものだ、と活動家たちは話す。

「責任が果たせないままでは」

火曜日遅くのスピルバーグ氏の発表は、オリンピックを主催する上での初めての大きなつまずきだ、とアナリストたちは語る。

この著名な監督は開会式と閉会式の芸術顧問として招聘されたのだが、役にとどまり続けることは自分の良心がどうしても許さない、と説明する。

「スーダン政府は今に続くこうした犯罪に対する責任の大部分を負っているが、国際社会、とりわけ中国は、もっと努力すべきだ」とも述べた。

この圧力に加え、英国のインディペンデント紙は第1面に、胡錦涛主席宛の、ノーベル賞受賞者、政治家、そしてアーティストら80名が署名した、ダルフールでのさらなる軍事行動を求める手紙全文を掲載した。

署名者には多くの元オリンピック選手ばかりか、南アフリカのデスモンド・ツツ大司教、前米上院議員ビル・ファースト、そして英国脚本家トム・ストッパードも加わっている。

同書簡は2月12日に活動グループCrisis Action によって発表されたものだが、中国には、この物情騒然とした地域に平和をもたらすのを促す機会も責任もある、と述べられている。

「私たちの考えでは、この責任が果たせないままでは、自国民に残虐行為を続ける政府を支援するも同然です」と手紙には書かれている。
(BBCニュース 2月14日)


グローバル化を世界の人びとはどのようにとらえているか

今日2月7日のBBCニュースで知りましたが、世界34カ国の市民34,500人を対象にしたグローバル化についての世論調査の結果が発表されました。

 タイトルは「経済グローバル化への不安広がる」。

「世界34カ国のうち22カ国で、貿易・投資を含めて経済のグローバル化の進展が速すぎる、という意見が多かった。平均すると半数の人がそのように考える一方で、35%は遅すぎる、と答えた」

「G7先進国首脳会議の国々――蔵相会議が今週末に開かれる――では、平均して57%の人が速すぎると答えた」

 という言葉で始まる調査報告書をBBCの記事を元にしてまとめてみました。

 この世界世論調査はBBCワールドサービスのために、国際世論調査企業Globescan社が面接か電話によるインタビューにより、メリーランド大学の世論調査を専門に研究する部門The Program on International Policy Attitudes (PIPA)との共同で、先頃の世界的な株価下落が起こる前の2007年10月31日から2008年1月25日の間に行った。 
 
 34カ国は次の通り。

 アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、カナダ、チリ、中国、コスタリカ、エジプト、エルサルバドル、フランス、ガーナ、ドイツ、イギリス、グアテマラ、ホンジュラス、 インド、インドネシア、イスラエル、イタリア、日本、ケニア、レバノン、メキシコ、ニカラグア、ナイジェリア、パナマ、フィリピン、ポルトガル、ロシア、 韓国、スペイン、トルコ、アラブ首長国連邦、アメリカ
(34カ国のうち16カ国は、サンプルが主要な都市部に限られていた)。


 1.世界の市民の64%は、経済成長の恩恵を公平に受けていないと思っている

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 だいたい、世界中の市民のうち64%が、経済成長の恩恵を公平に受けていない、と考え、34カ国中27カ国でその考えに賛成する人の方が多数である(上の円グラフ)。
 
  この例外の一つが、この10年で年10%を超える桁外れの経済成長を経験してきた中国だ。エコノミストは農村部と都市部の格差が急速に広がったと説明する が、ほとんどの中国人は、公平に経済成長の恩恵を受けてきた、と答える。(ただし、中国での調査は都市部のみで行われた。農村部が含まれていたら、また 違っていたかもしれない)。

 中国の一般の人たちはグローバル化の速度に強い関心を持っているが、それはシャンハイのような都市の物理的・社会的景観が急激にめざましい変貌を遂げているからだ。

2.グローバル化に対する不安の強さは、経済成長の果実の分配が公平に行われていないと考えることと密接に関連しているが、富める国と貧しい国とでは、グローバル化の進み具合に対する評価が異なる

     (赤:グローバル化が速すぎる 黄:遅すぎる)
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      (赤:経済成長の果実と痛みの分配は公平になされている)
      (黄:公平になされていない)
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  概してアメリカ、フランス、ドイツ、イギリス等、世界でもっとも豊かな国々で、グローバル化に対する不安がもっとも強い。これは、経済成長の果実の分配が公平に行われていない、と考えることと密接に関連している(上の二つの棒グラフ)。
(日本はこのグラフには載っていないが、速すぎる:50% 遅すぎる:14%)
 
 これに対して、世界の最貧国の多くでは、大多数が経済発展の恩恵と痛みが公平に分担されてこなかったのはグローバル化の進展が遅すぎるからだ、と答える可能性の方が強い。

 一部の発展途上国では、グローバル化に拍車がかかれば、自分たちの国の不公平な状況を多少でも打ち破るのに役立つのではないか、と考えられているようだ。 
 グローバル化と経済成長の果実の分配をこのように捉えるのは、フィリピン、インドネシア、ブラジル、ケニア、メキシコに強く見られる。
 
3.自分たちの国の経済状況は、グローバル化によって悪化した、と考える市民の方が多い

 自分たちの国の経済状況が良くなったと答えたのは、アメリカでは市民のたった22%で、78%の市民が悪くなったと答えた。

 フランス、イタリア、日本はみな悲観的で、良くなったと答えたのは、フランス人の22%、日本人の34%(BBCの記事では33%となっているが、調査結果を見ると34%)にすぎない。

 対照的に中国、ロシア、カナダ、オーストラリア、アラブ首長国連邦では楽観的な見方が見られるが、みな経済成長増大の恩恵を受けている国々で、ひとつには原油と鉱物の商品価格が上昇した結果でもある。

(良くなったと答えたのは、中国84%、カナダ72%、オーストラリア71%、アラブ首長国連邦69%、ロシア63%、インド56%)
 

 富める国々の間でも、グローバル化への関心は、発展の社会モデルを好むフランス、スペイン、イタリア等の西ヨーロッパの国々でもっとも強い、ということが目をひく。
 
 アメリカやイギリスといった「アングロサクソン型経済」をとる国の方がグローバル化への関心がいくぶん弱いのは、フランス、スペイン、イタリア等と比べて経済成長の減速が速く、不平等も先鋭的に増してきたからだ。

*追記:
 
 ちなみに日本の場合を見ると(面接による全国的な調査なのでかなり信頼できそう)、

国内経済について;

 非常に良くなった%  少し良くなった33%  少し悪化した33%  非常に悪化した12
   (残りの21%は、「状況次第」「変わらない」「分からない」「答えなし」 これはインドの31%に次いで多い)

世界経済について;

 非常に良くなった%  少し良くなった26%  少し悪化した35%  非常に悪化した
   (残りの32%は、「状況次第」「変わらない」「分からない」「答えなし」)

経済的恩恵は公平に受けられているか;
  
 非常に公平だ%  少し公平だ11%  少し不公平だ51%  非常に不公平だ33
   (残り4%。実に84%が不公平だ、と答えている)

グローバル化の速度について;

  速すぎる14%  少し速すぎる36%  少し遅すぎる11%  遅すぎる
   (残り36%)

経済成長の恩恵と痛みに対する不公平感を感じている方が多いのは、34カ国中、27カ国ですが、恩恵を享受している人が多そうな国と、痛みを負っている人が多そうな国とが極端に別れています。
               
                 グローバル化
  
  このグラフで青色系が公平だという人の割合、暖色系が不公平だという人の割合です。
 ぱっと見ただけでも、世界中で不公平感を抱いている人がどれだけ多いか分かりますね。

 特にアジアでは韓国、日本、フィリピン、中南米諸国、西ヨーロッパ、産油国でない中東の国々がひどい。

 目をむくほど公平感が行き渡っている(72%)のがアラブ首長国連邦。いわずと知れた産油国です。
 その下の公平感と不公平感がほぼ拮抗しているのがエジプト。産油国でもないのになぜ? と不思議に思ったところ天然ガスの輸出等で経済は好調のようで、成長率は年6%以上で推移しているとか。

 不公平感が強い、とは要するに満足していない人が多いということでしょう? 資源のある国とない国がこうも歴然としている有様があまりに単純なので面食らうほどです。

 そしてこの不公平感・不満足感の強い国々の中でもメキシコ、ブラジル、ケニア、インドネシア、フィリピン、トルコ等の途上国は、いずれもグローバル化の速度が遅すぎると考える人の方が多数です。
 程度の差こそあれ、グローバル化に何らかの期待を抱いているということでしょうね。

 私たちの国もコイズミ純一郎氏が“改革”を煽り立てていた頃は、まだ同じような期待感を持つ人が多かったのでしょうが、今では不公平だ、グローバル化が速すぎると考える人の方が圧倒的に多数です。

 グローバル化が速すぎる(50%)し、そのうえ成長の果実も痛みもとても公平に分け与えられているとは思えない(84%)、と私たち日本人の多くが感じているというのに、国会答弁に立つ閣僚たちのなんと脳天気な言葉

 8日朝(、偶然眼にしたNHKの国会中継。
 今年度から10年間で59兆を費やして道路中期計画を実施していくという話ですが、計画を立てる際の資料は、なんと1999年の道路交通センサスだそうです。
 
 すでに国土交通省のHPでは2005(平成17)年の各種統計が閲覧可能というのに、なぜそれを利用しないのか、という野党議員の質問に、統計を元に計画をたてるのには手間暇時間が3年もかかるのだ、という冬柴大臣の答弁でした。

 これでは、国会ではただ審議の時間をやり過ごすのが大臣の仕事か!? と思われても仕方ないでしょう。
 

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おばちゃん そして男と女

大阪府知事選挙で橋下氏を支持したのが女性と若い世代だということで、あらためて焦点の当たった“大阪のおばちゃんたち”。

 たしか大阪のおばちゃんたちは、振り込め詐欺にも引っ掛かりにくかったのではなかったかしら。それが東京のおばさまたちと比べても歴然としていたというのに、こと選挙に関しては同じ結果が出てしまったようですね。

 同じおばさんとして、この界隈では少々肩身の狭い思いをするなあ、と思っていたところ、こんなニュースが飛び込んできました。といっても、ただBBCニュースの片隅に要旨が載っていただけなのですが。
 なんでも著名なアメリカの女性人類学者のヘレン・フィッシャーさんがダボス会議で講演したようです。

 地球温暖化対策問題の作文を福田首相が読み上げ、竹中平蔵氏が招待されたと自慢する“ダボス会議”って、いったい何の話し合いをしているところなんだろう? と思って少しばかり関心が向いていたところですので、訳してみました。


なぜ、会社には女性管理職が必要か

経済部長ティム・ウェーバー
BBCニュースwebサイト 【ダボス】

ヘレン・フッシャーが話しをすると、聴衆のうち左派あるいはリベラルの立場に立つメンバーは多分たじろぐだろう

「たしかにフェミニストではありません」と明言して、このラトガーズ大学のアメリカの人類学者は、男女の差異を分析する。

男性はどちらかといえば分析的で、女性はどちらかといえば長期的な計画を立てることが上手。

恋に落ちる形も異なる。

その上、鋤が発明されてからこのかた、男女の平等はさらに後退することになった。

フィッシャー氏が言うことは、わけのわからない戯言ではない。彼女は、考古学上の証拠、MRIによる脳のスキャン、男女の行動のありさまに関する遺伝学上の大規模な調査に基づいた研究成果を根拠にしている。

それに、男女の脳の発達および機能は異なっていると理解することは、デートゲーム中に限らず大切だ。

適材を雇い、チームワークを改善して会社の純利益を増やすことを可能にするのに役立つ(ダボスの世界経済フォーラムでの講演のタイトルを一部引用して)。

その昔

共働き家族は現代の発明ではない。

有史以前では共働き家族が標準で、夕食の60〜80%を女性が用意しました、とフィッシャー氏は言う。

しかし鋤の発明を受けて厳しい肉体労働が求められ、力の均衡が崩れた。

第1次世界大戦以降ようやく、女性たちは再び労働人口に数えられて、社会での地位を取りもどしていってる。

しかし男女間には、何千年もの進化の過程で形づくられてきた、はるかに基本的な相違があります、とフィッシャー氏は話す。

まず第一に、男性と女性とでは、考え方が異なる。そのことは、他の多くの研究と同様に、脳のスキャンで立証される。

概して女性の方がどちらかというと多くのデータを集め、状況を考慮し、直観力があり、相手の身になって考える心に富み、より長期的な視点で考える。フィッシャー氏はそれを「ウエブ思考」と呼ぶ。

一方、男性の方は、どちらかというと集中的で、直線的な思考をし、ルールと短期「ステップ思考」に集中する。

男女差を生む原因

男女の思考の差はテストステロンのせいだ。母親の子宮の中で胎児の脳が発達する時から、テストステロンのレベルが高ければ、その後の人生では細かな点に注意を集中するようになる。

さあ、手を持ち上げて掌を見て。薬指が人差し指より長いですか? もし薬指の方が長ければ、テストステロンが高レベルで分泌されています。

男性であれ女性であれ、分析的な思考をする人(あるいは非常に音楽的才能に恵まれている)の可能性があり、薬指の方が短ければ、長い人よりも相手の身になって考える心に富んでいることが分かる。そして男性が大人になるのには、多量のテストステロンが役に立つのだ。

証拠ですか? 女性の書いた映画の脚本は、男性の書いたものよりも込み入っていて、結末が曖昧だということが研究で明らかになっています。

男性医師は病気とその治療に注意を集中させ、女性医師は、もっと全体的なアプローチをとる。

長期的視点に立った思考をするので、どちらかといえば女性は投資家として優れている。

ベッドインにも当てはまる真実よ、とフィッシャー氏は語る。男性は自分のしていることの方に集中しがちですが、女性は気を逸らされやすいのよ、というと、聴衆からはちょっとまごついたような笑いがこぼれる。

また男性は、年をとるほどテストステロン・レベルが低下して、脳の働きが違ってくる――他人の苦境に、以前よりも同情を示すようになるのだ。

それにしても、なぜ違ってくるのでしょうか? そうですねぇ、長い間にわたって、男性は狩人だったので、注意を集中させる必要がありましたからね。

対照的に女性は、子供たちを育て上げるなど、はるかに多様な仕事にたずさわった(女性の方がおしゃべりなのはこのせいかもしれない、とフィッシャー氏も考えている。言葉は子供たちを管理する重要な道具だ)。

ビジネスでの事例

では、こうしたことすべては、ビジネスリーダーにとって何を意味するのか?

女性の長期的視点に立つ思考と男性の短期的視野を結びつけること。

そして異なる思考は、同時に非常に異なる行動を生むということを心にとめておくこと。

男性は、どちらかといえば地位や序列で考えるが、女性は序列のない方を好む。

男性は視野狭窄になる可能性があるが、女性は核心をつかみ損ねるかもしれない。

攻撃されて、立ち向かうのが難しいと気づくのが女性ならば、撃退して他の男たちの尊敬を勝ちとるのが男性だ。

女性は謝っても、本当はすまないと思っていない。が、男性にとって謝るということは自分の立場の低下に気づくことで、深刻な問題だ。

フィッシャー氏は次々に例をあげ続けるが、言わんとするところは明らかだ。

管理職は、男性と女性とでは行動が異なること、そして互いに補完し合うことを自覚しなければならない。

男だけ、あるいは女だけのチームでは、歩かないで片足飛びをするようなものだ。

女性の地位が再び上昇しているとき、私たちは「百万年前のライフスタイルに向かって前進する」のです、とフィッシャー氏は語る。

***以上***

 うーん、おばさんの話題とはちょっと違いましたね。
(申し訳ありません。外出前に慌ててアップしたので読みづらかったと思います。少々手直しをしました)。


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 Luxemburgさん、拍手コメントをありがとうございます。
 中曽根さんあたりから、すべて演出ですか!? たしかこの方をプロデュースしたのは、劇団四季の浅利慶太氏でしたよね。そして橋下氏は芸能事務所タイタンですか。

大統領選 ブラックウォーター 民営化

久しぶりにデモクラシー・ナウに行きましたが、やはり面白くて(明らかにされている事態があまりに由々しきものなので面白いと表現するのが適切かどうかためらいつつ)、つい引き込まれるように読みふけってしまいました。

 特にこの記事、「2008年大統領選でのブラックウォーターの役割とは?」には、あらためて米国政府に巣食う「戦争で巨利を得る企業」とつながりの深い人脈や共和党の大統領選候補者と民間軍事会社の不気味な関係にゾーッとしました。
 私たちの国の政財界リーダーたちが何かとお手本にする米国の病巣の深さは想像以上です。

 金儲けに血眼になっている政財界人たちがタッグを組んで、この米国流戦争景気を私たちの国に導入しはしまいか、とても心配。
 実際、砲弾こそ撃ち込まれていないものの、郵政を初めとするさまざまな行政機能が民営化の波にさらわれ、“グローバリズム”の戦場になっているのじゃないかしら、私たちの国も。

 石油があれば石油が、その他資源があればそれがターゲットになって、貪欲な奴隷商人たちが跋扈する世界。私たちの国には、たまたまゆうちょ・かんぽがあったし、エコノミック・アニマルと揶揄された力で築いた産業上の財産があったし。それで要らないものをわんさと押しつけられ、むしり取られる。
 
 それが実際に砲弾が飛び交う戦場となった国は酷すぎます。石油があったばかりに。いえいえ、石油がなくとも、何もなくとも、兵器・傭兵の消費地としての価値はあります。

 ちょっと脱線してしまいましたが、本題に戻って、共和党大統領候補者ミット・ロムニーと悪名高い民間軍事会社ブラックウォーターの関係を、スコット・ハートンとブラックウォーター・ウォッチャーのジェレミー・スカヒルの話しを訳してまとめてみました。
 J・スカヒルは『ブラックウォーター 世界最強の傭兵軍隊の勃興』(まだ邦訳はないようです)の著者。

 昨年の12月7日、米国国務省監察官のトップが辞任した。そのきょうだいがブラックウォーター社の顧問理事を務めていたことを明らかにした直後のことだ。辞任した監察官の名はハワード・クロンガードで、国費の無駄遣い・詐取・濫用等の調査に責任のあった国務省のトップ官僚だった(ちなみに国務省トップは、あのライサ氏)。
 きょうだいの名はアルヴィン・クロンガード。酔いどれクロンガードがニックネーム。

 で、ブラックウォーターに武器密輸等の疑惑が持ち上がったとき、ハワード・クロンガードは国務省の契約相手のブラックウォーターに対する強制捜査を故意に止めていたのではないか、という疑惑がもたれた。

 この酔いどれクロンガードは、2002年にブラックウォーターが傭兵ビジネスに参入したときはCIAのナンバー3という重要人物で、同社が初めてアフガニスタンに進出した、知られているだけで500万ドルの傭兵契約を結んだときの中心人物だった。

 こうして兄弟それぞれが5年以上の長期にわたり、かたやブラックウォーターの違法行為の捜査責任者、かたや違法行為の当事者であるブラックウォーター側の人間で、しかも同社が政府と契約を結ぶ際の立役者だった、ということになる。
 偶然の一致にしてはできすぎてる。

 そしてブラックウォーターといえば、コーファー・ブラックと、彼を選挙参謀に指名した共和党大統領候補ミット・ロムニー。
 
 コーファー・ブラックはブラックウォーター・ワールドワイドの副社長にしてミット・ロムニーのテロ対策に関する上級アドバイサー。そして35年間CIAにいてそのうち28年間はCIA以外には職を得ていない。9.11のときは、CIAのテロ対策センター長だった。
 ロムニーは、大統領になったら(テロ容疑者を収容する)グアンタナモ基地を2倍に拡張すると言ってる。

(パウエル前国務長官は、昨年6月、NBCテレビに出演し、キューバにあるこの米軍基地をすぐに閉鎖するよう訴えた、というのに。
 この基地には司法の手続きをとらないまま多くのテロ容疑者を拘束している収容所があり、パウエル前長官は容疑者について「米国の施設に移し、国内の法体系の下に置くべきだ」と述べた、と伝えられていますから、このロムニー候補の主張はいかに無茶なことか分かります。
 容疑者の尋問にも民間軍事会社の社員が関わっているといわれています)。

 またCIAがテロ容疑者の尋問を映したテープを2本破棄した問題について、ロムニー候補は返答を拒否した。つまり、アルカイダ幹部のアブ・ズベイダ容疑者に対する水責めを撮したといわれているテープのことだが、ロムニーは水責めが拷問に当たるかどうか、返答を拒んだ。
 
 人の手足を切断すること残虐行為に取り憑かれたこのコーファー・ブラックは、すでにロムニー陣営の最重要人物のひとりになっている。さらに彼は民間の情報会社トータル・インテリジェンス・ソリューションの経営者でもあり、この世界ではドンのひとりだ。

 さて、ブラックウォーターについてだが、この傭兵産業界そのものが古くて汚れたイメージを払拭しようとしてきた。ブラックウォーターもwebサイトを一新し、名称もブラックウォーター・USAからブラックウォーター・ワールドワイドに変更。商標も変えたが、それは国連旗を連想させる。

 ブラックウォーターの傭兵は、「パーソナル・セキュリティ専門職」とか「パーソナル・セキュリティ選抜部隊」と呼ばれることも。いわば「地球安定化専門家」というわけだ。

 webサイトではブラックウォーターのTシャツを着たテディ・ベアを購入することまでできる。

 ブラックウォーターの空挺部隊員は米国国内でもフットボールの試合のハーフタイムにパラシュートで見事な着陸を見せた。
 これはメキシコとの国境のすぐ近くに824エーカーのキャンプを同社がオープンすることに地元が大きな抵抗を見せていることへのデモストレーションだ。

 最近ブラックウォーターは、中央アジアでの軍事行動について、ペンタゴンとの9200万ドルの契約を獲得した。
 184フィートの船も持つ。
 無人の飛行船のテスト飛行もし、それを国土安全保障省に売り込み中。これはメキシコとの国境をモニターするため。国境パトロールは民営化の可能性に直面している。

 さらにはスポーツ用多目的車の多様性と装甲車両の耐久性を結びつけた、歴史上最も用途の広い装甲車両も製造している。社主のエリック・プリンスは、これをハイウェーと一般道路でも走行できるようにする気でいる。

 我々はハリケーンに、洪水に、そして火事にも、即座に対応できる、とブラックウォーターは胸を張る。実際、ハリケーン・カトリーナの復旧ビジネスにも駆けつけた。

 国土安全保障省は徹底的に民営化されつつある。
 米国のインテリジェンス予算の70%は民間請負業者の手中にある。

(こうなると、民営化は米国の納税者そのものも食いものにしているといえるかもしれませんね)。

 さて、このブラックウォーター社の犯罪ともいえるイラクでの蛮行ですが、中でも昨年9月に殺害されたもの16人、負傷したもの24人の事件が記憶に新しいところ。犠牲者の遺族と生き残ったものが同社を訴え、大陪審員団が召集された。

 これに関わったブラックウォーター社員がはたして起訴されるのか?
 起訴の可能性が最も高いのは軍事域外管轄権法という市民法が適用される場合である。
 が、これは国防総省と契約している民間人にのみ適用され、その他の省庁と契約している場合にはあてはまらない。ブラックウォーターは国務省と契約している。

 現在議会はブラックウォーターにも適用されるように法律を改正しようとしているが、以前に遡っては適用されない。戦争犯罪を除き、現在ブラックウォーターに適用できる法律はないに等しい。
 
(以上ジェレミー・スカヒルの話しから)

 いや、適用するかしないかの問題は、国防総省の請負業者かどうかじゃない。偶発的に起こったこの活動に関わっているか否かだ。
 ブラックウォーター側は国務省職員にセキュリティを提供しているに過ぎないと主張するだろうが、現実にはブラックウォーターの活動はイラクの全軍事活動の一部だ。
 だから問題の件は戦争犯罪だ。当然裁判権がある。しかしブッシュ政権はそこまではしたがらない。

(以上スコット・ハートンの話しから)

*** 以上デモクラシー・ナウから***

 以前、ナオミ・クラインが、国家の機能をどんどん民間に移行していくことを、足を次々に切り落とされていくタコになぞらえていた話しをしたことがあります(「新自由主義=新植民地主義の行き着く先」)。

 この新自由主義=新植民地主義の最終段階では米軍そのものが収奪された。いわば「自己収奪」だ、と言ってます。

 米国の外から見ると、米軍が侵略した国々ばかりか、米国そのもの、言ってみれば米国の有権者、納税者、国民そのものが収奪の対象になっています。いわば、自己の足を次々に喰らうタコのようなもの。

 自分たちで選んだ大統領だ、政権だ、ということは私たちの国でもいえることですが、あまりに酷い結果です。

 
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 碧猫さんのところで知った新聞記事。

 これを元にしてSankeiのコモリ記者が「慰安婦決議案 米下院委が可決 中国系反日団体が圧力」の記事を書いているのですが、どうも怪しいぞと碧猫さんが懸念されている様子でした。

 そこで碧猫さんが探し出した地元新聞に掲載されたものを読んで訳してみました。

 一番気になったのは、決議案の可決を促す人たちを、コモリ氏が「中国系反日団体」とひとくくりで済ましてしまったこと。

 実際の記事に登場したのは、世界抗日戦争史実維護連合会the Global Alliance for Preserving the History of World War II in Asiaと台湾の民主制を支持する中国系アメリカ人the Chinese Americans for Democracy in Taiwan等でした。

 コモリ氏の記事ではおそらく台湾系と思われるアメリカ人のことが無視されているのです。
(なお、このDemocracy in Taiwanについて、こうした団体が存在するのかネットを調べてみましたが、いまのところ不明です。いずれにせよ、forで繋がっているのですから台湾の民主制を支持する人たちでしょう。ちなみに台湾の民主化は李登輝氏主導で、1987年の戒厳令解除後の政党結成の自由・メディア規制撤廃あたりから始まります)。

 それにしてもコモリさん、そんなに“反日”を煽って、何がしたいんでしょうか?
 
 なお、下院外交委員会での可決についてはここにも、こちらにも論評があります。

 6月8日の時点では、アジア系アメリカ人のグループも決議案の可決が可能かどうか不安を感じて焦っていたようすがこの記事からうかがわれます。

 そこへ来てワシントンポストに慰安婦決議案の内容は歴史的事実と異なると反論する自民党と民主党、無所属の議員45人と教授、政治評論家、ジャーナリストらの意見広告が掲載されたわけですから、確かにこれによって可決への流れが一気に強まったと考えてもおかしくありません。

 またこの決議案を提出したマイク・ホンダは、2月の日米タイムズのインタビューにこたえて、

 犠牲となった20万のうち残されているのは300人にも満たないこと、そのため一日経てばそれだけ謝罪を得る機会が失われる。

 これまでも日本の首相は謝罪をしているが、それは首相たちが個人として痛恨の念を述べただけだった。
 ちょうど戦時中に強制収用された日系人に対する償いと賠償を決めた442号決議案の時と同じように、議会が正式に謝罪し、それから政府を代表して首相が謝罪する必要がある。

  といったことを語っています。
 
 また、決議案は日米関係に悪影響を与えるという加藤良三大使の言葉を“ばかげてる”としながらも、大使からいろいろ働きがけのあったことを語ってます。

 なんでも、3月に予定のアジア女性基金の解散を先延ばしにしてもいい、という提案が大使からなされたようです。
 それ以外は、忘れたといって言葉を濁しながらも、決議案の取り下げはできない、するつもりはない、と明言するマイク・ホンダ。

 インタビューの最後は、正式な謝罪によって、日本と他のアジア諸国との関係はさらに強化されるだろう、という言葉でした。
 

 では碧猫さんのところにあった問題の記事から。

 ***********

アジア系アメリカ人、日本の謝罪を求める

日米タイムズ・ウィークリー 2007年6月14日付

 クパチーノ発(ベイシティ・ニュースサービス通信)――6月8日、アジア系アメリカ人のグループがコミュニティを訪れるなか、第2次世界大戦前及び最中のアジア女性たちの強制売春について日本政府の謝罪をもとめるよう議会への働きかけを促すべく役員を選んだ。

 世界抗日戦争史実維護連合会(直訳:アジアにおける第二次世界大戦の歴史保存を求める世界連盟)のメンバーたち、民主台湾を支持する中国系アメリカ人らは、6月8日中華レストランに会し、マイク・ホンダ議員(民主 サン・ホセ)の提出した下院決議案121号の支持を促した。

 同決議案は日本政府が日本の帝国軍隊が若い女性に性奴隷を強要した歴史上の責任を認め、謝罪をして責任を受け入れるよう主張している。

「これは人権問題です。女性の人権問題です」とバリー・チャンは言った。「正当な行動ですよ」。

 チャンの話しでは、日本政府は若い女性に性奴隷を強要したことは認めたけれども、今だに正式な謝罪をしていないということだ。

 世界抗日戦争史実維護連合会副会長イグナチウス・ディンによれば、下院議長のナンシー・ペロシ(民主 サンフランシスコ)と下院議員トム・ラントス(民主 サンマテオ/サンフランシスコ)の応待はその場しのぎだと語るグループのメンバーもいたという。

 ラントス議員は人権で高い評判を得ているが、決議案121号支持要請にも返事がなく、有権者およびアジア系アメリカ人コミュニティを軽視する態度を見せている、と同グループは断言する。

 同グループのメンバーには、民主党および共和党へ献金をしているものもいるが、資金調達の目的のために利用されるだけで、 いざ行動といった段になると無視されるということではないかと懸念している、と語った。

 同決議案は現在129名の賛同者を得ているが、可決を確実なものにするには218名の賛同者が必要だ。融資条件がついてないとか政治的検討課題にのぼってないとかいうだけで、道徳的に正しい決議案をよくも簡単に脇へ追いやれるもんだ、とディンは述べる。

 ディンによれば、同決議案は全米9,000の教会の支持も得ているということだ。

 チャンとディンは同時に、ラントスは33%のアジア系アメリカ人がいる地区を代表しているが、意思の疎通ができなければ、その時にはおそらく新しい代表者が選ばれることになるとほのめかした。

 同グループは、カリフォルニア12区の人口統計上の数字と2008年の選挙でラントスに対抗する独自候補を立てる根拠になると思われるこれまでの選挙結果を引いて、その脅威を裏付けた。

 ラントスの事務所から受けた扱いに、「狐につままれた気分だ」 とディンは語った。「最近まで、ラントスは我々に良くしてくれていたのに」とも。

 アジア系アメリカ人の女性に適任者がいて、その女性も含めて何人か候補者を考えているとディンは語るが、女性の名を明かすことはなかった。

***** 以上 *****


 ↓ とりあえずガスパーチョさんからお借りしました。

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* とくらさんのビラの画像を使いたいといわれた方、どうぞ使われてけっこうですよ。
  ただし、大切に扱ってくださいね。

新自由主義=新植民地主義の行き着く先 

海舌さんがナオミ・クラインについて「 Naomi Klein氏のイラク観察は的確⇒三つの植民地主義の合体」を書かれています。

 私が読んだ彼女の講演録と同じようなものを海舌さんも読まれたようです。

 4月7日のエントリー「新植民地主義と国家の民営化 ワーキングプアにもなれない人たち」でナオミ・クラインさんの講演録の抄訳を載せていますので、再度ここでそれをとりあげます。

 ***** 以下、ナオミ・クラインの紹介とその講演録の抄訳(訳:とむ丸) *****

 新自由主義新植民地主義だ、と喝破するカナダのジャーナリスト、ナオミ・クラインさんの話しを聞いてみましょう。
 著述家としてもジャーナリストとしても評価の高いナオミ・クラインさんは、先頃ニューヨークであった講演で「国家の民営化」について語っています。

 彼女は『ネーション』『ガーディアン』のコラムニストで、『貧困と不正を生む資本主義を潰せ――企業によるグローバル化の悪を糾弾する人びと』や国際的なベストセラーブランドなんかいらないの著者。
 この秋刊行予定の著書はThe Shock Doctrine: The Rise of Disaster Capitalism です。

 ではナオミ・クラインの講演から要約します。


 国家のあらゆる面を民営化しよう(完全民営化法人ユートピア)という動きは1973年のピノチェトがクーデターで政権を握ったチリに遡る。この時ピノチェト政権はミルトン・フリードマンの弟子にあたるシカゴ大出身の経済学者たちと手を組んだ(このことについては、花・髪切りと思考の浮遊空間さんも書かれています)。

 この時のプロジェクトは新自由主義と呼ばれるが、 従来の植民地主義とは異なる意味で「新植民地主義」といえる。

 新植民地主義の第1段階は、未加工資源の収奪、つまり未加工資源の輸出。

 第2段階が、大恐慌の後遺症の中と戦後好景気の時期に構築された医療保健制度・教育制度・道路・鉄道の収奪。
 つまり国家そのものの露天掘り

 アメリカにおいても、レーガン政権以来過去30年間にわたってこの民営化プロジェクトが推し進められてきた。
 タコの足でイメージされる国家の組織が、電話制度や道路サービスのように次々に民営化されて、まるで不要だとでもいうように足が切り落とされてきた。そして最後に残されたものは中心のコアと呼ばれるものだけ。

 ブッシュ政権は、 この最後に残ったコアを狙い、私たちが国家と考える本質的な部分、行政府そのもの・社会保障の管理・福祉・刑務所・軍隊の類を民営化してきた。

 2004年にイラクを訪れて目にしたものはハーパーズマガジンに寄稿した「バクダッド・ゼロ年」で述べたが、植民地主義と新植民地主義のこうした施策の積み重ね、収奪の追求だ。

 現在閣議は通ったが議会は通っていない新石油法では、この収奪が合法化されている。
 これはまさに、1950年代から70年代にかけてのアラブナショナリズムの波、資源の返還要求が出てきた状況であり、アラブ・ナショナリズムの旗印の下に築かれた産業・工場の収奪であり、90年代の旧ソ連で見られた矢継ぎ早に実施されたショック療法型露天掘り収奪であり、イラクの「プランA」だ。

 さらにポストモダンの時代は、イラクを侵略した米軍、米陸軍そのものが収奪された。これがポストモダンのイノベーションで、マクドナルド、タコベル、バーガーキング等のファーストフード産業を引き連れて戦争を遂行していくプロセスでの自己収奪といえる。

 イラクではありとあらゆることが大惨事になっている。
 確実にイラクの人々に惨禍がもたらされたが、同時に米国の納税者たちにも惨禍をもたらした。

 イラク情勢が悪化すればするほど、この戦争はますます民営化されるようになり、ロッキード・マーチン、ベクテル、ブラックウォーターといった会社がいよいよ儲かるようになる。

 イラクでは「任務の自然増殖mission creep」が固定化して終わりが見えず、多国籍軍に参加していた国々が撤退すればするほど、請負業者が潤う構造になっている。この間の事情を実証したのがジェレミー・スカヒルの本、Blackwater:The Rise of the Worlds Most Powerful Mercenary Army

 イラク、アフガニスタン、イラン、イスラエル、パレスティナ等での戦争や温暖化問題等の脅威、資源戦争の煽り、原油価格の高騰等を前にして、ダボス会議で唱えられた持続可能なグローバリゼーションは、もはや真実を映していない。
 
 the Guns-to-Caviar index (実際の訳語が分かりませんので、一応、「大砲vsキャビア指数」としておきます) は、戦闘機(大砲)とエグゼクティブの自家用ジェット(キャビア)それぞれに費やされる金額の間には反比例の関係がこの17年間、ずっと見られた。

 それがここにきて、突然、両方が共に上昇するという正比例の関係になった。

 これは、怖ろしく大量のキャビアを買えるほどの大砲が多量に売られていることを意味する。そしてこの経済活動の中心にいるのがブラックウォーターだ。

 戦争で暴利をむさぼるものと闘うためには、そうしたビジネスが成長する機会を取り除くこと。これは不安定な社会の空気や地政学的な要素をもっと平和的で安定したものに変えていくことだ。

***** 以上 *****

 ナオミ・クラインさんは、新自由主義をポストモダン時代の新植民地主義である、と喝破し、次のように新植民地主義を段階づけました。

第1段階:未加工資源の収奪

第2段階:行政機能の民営化。「国家そのものの露天掘り」

第3段階:戦争遂行プロセスでの「自己収奪

 天然資源に乏しい私たちの国では、第1段階は未加工資源の収奪ではなく、国鉄民営化に始まる一連の改革でしょうか。

 そしてコイズミ以来、第2段階に手をつけ始めています。

 防衛庁が防衛になって、第3段階が見え始めました。

 イラクでは「任務の自然増殖mission creep」が固定化して終わりが見えず、多国籍軍に参加していた国々が撤退すればするほど、請負業者が潤う構造になっている、という戦争遂行プロセスでの自己収奪を説明しましょう。

 この請負業者の一つが、以前のエントリー「奪われる背景」で書いたブラックウォーター等の民間軍事会社PMCで、『外注される戦争』にあげられているPMCはすべて、アメリカ、イギリス資本です。このあたりは、ブッシュのアメリカと同様に、ブレアのイギリスがイラク戦の深みにどんどんはまっていったことと関係あるかもしれません。

 兵站部門、つまり後方支援こそ、民営化の面目躍如、といったところ。

 イラクでは治安の確保が不十分なところで復興ビジネスが始まりましたが、軍隊以外の政府機関・民間企業・NGOの民間人をまもることは米軍のミッションには含まれていなかったのでPMCの安全サービスが必要でした。

 混乱に乗じて「ひと花咲かせよう」とイラク入りしたビジネスマンや元軍人たちは「安全ビジネス」市場に新規参入してきました。

 イラクの警察・軍・司法機関を育成するのもPMCが請け負っています。

 問題は、この軍事部門の民営化だけではありません。

 1990年以来米軍は、ソマリアでも、ハイチでも、アフガニスタンでも、イラクでも、民間企業と兵站支援契約をどんどん結んできました。

 そうした企業の一つは、イラクとクェートで5万人の従業員を抱え、60カ所で業務を展開し、米陸軍の基地の建設・管理運営、計20万人の連合軍兵士の食料・洗濯、上下水道、電力の供給、米軍向けガソリン・潤滑油、ガス、スペアパーツ、弾薬その他戦争遂行に必要なあらゆる物資の輸送を手がけています。
 イラクでこの会社と契約して働く民間人は約10万。

 そして増大する一方のイラクでのコストに音を上げた米軍は、基地の運営でコストを削減を目指します。

 人件費の安い、劣悪な環境でも文句を言わない第3世界から従業員を募るだけではなく、兵士の生活する基地の環境そのものを安上がりなものにし、さらには新鮮で栄養価の高い食事と清潔な食事環境を提供してきた企業との契約を打ち切り、食費のコスト・ダウンを図ります。
 当然、食事の楽しみを初めとする兵士たちの生活そのものの質が大幅に低下することなったでしょう。

(こうした事情は、すべて菅原出著『外注される戦争』に描かれたものからとりました)。
 
 イラクで活動する民間企業とその仕事は数限りなくあります。

 世界中のさまざまな地域の人が戦場と隣り合わせの職場で、安くこき使われ、米軍自体が商売の対象にされる一方で、特需に湧く民間の軍事会社や兵站支援を請け負った企業は莫大な利益を上げる、という構図。

 国土が戦場となったイラクの人々は、土地も生活も破壊されて、命を奪われる。

「安全保障のコンセプトが変わった」と菅原氏は言いますが、 軍隊関係者でも軍事研究家でもない私は、こんな世界、やっぱりおかしい、と言いたいです。

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*追記: ベクテル社Bechtel Corporationとは、

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世界トップクラスのエンジニアリング、建築、プロジェクト管理会社の1つ。サンフランシスコに本社を置き、世界中に60を 超える事務所を構え、約40,000人を雇用。Bechtel社は、140か国で20,000を超えるプロジェクトを完了し、現在、66か国で 1,100のプロジェクトに携わっている。


小泉首相の暴言? 失言? 女性は犬のように子どもを産むように

天木直人さんのところで知り、急遽購入したサンデー毎日。50年以上生きてきて、これが数度目の週刊誌購入でしたが、何を読みたかったかというと、岩見隆夫さんの「サンデー時評」。
 
 昨年正月の記者会見で、小泉首相(当時)が「戌年にあやかって、女性は犬のように子どもを産むように」と言ったという記事を確かめるためです。
 そして、しばし呆然。

 犬のように子どもをたくさん産め、と言われて嫌悪感を感じない女性はいないでしょう!

 ことの始まりはロンドン在住の故森嶋通夫元ロンドン大教授の奥さまが、2006年1月5日付のタイムズ紙に、笑顔の小学生たちに囲まれてうれしそうにし ているコイズミ氏の写真が大きく載り、それについている見出しが、「戌年にあやかって、犬のように子どもを産むようにと女性に言った」とあることに憤って 、『一冊の本』(朝日新聞社刊)のコラムに書いたことのようです。

 森嶋さんは、「小泉発言は日本ではまったく無視され(!?)続けているようなのに比べて、柳沢発言はそれ以後大臣の退任まで要求する反対が盛り上がったり、議会審議の進行に支障が起こったりしていると聞く。タイムズの記事で驚き憤慨した私は、この大きな反応の違いはどこから出ているのかと考えざるを得なかった」と書かれているとか。

 そのタイムズ紙の当該記事も見つけました。以下はその訳です。

 小泉純一郎の口から、年頭記者会見――昨年の日本の人口が19,000人減少し、これから100年以上は続く人口減少時代の始まったことが明らかになって以降、最初に姿を見せた公式の場――で、いきなり「犬のように産め」発言が飛び出した。今年は戌年なので、2006年の日本人の理想的な役割モデルは動物界にある、と彼は説明した。「犬はたくさん子を産むので、日本人も子どもをたくさん産めば、労働力問題は心配ない」と語り、「人びとが子育ては楽しい」と考えることができる環境をつくるために,
これからあらゆる施策をとるつもりだとつけ加えた。

 小泉氏は出生率問題に対処する方策について、しかも首相としては最後の年頭記者会見であることはほとんど確実な中で、この「犬のように産め」をしのぐ提言は、何もなかった。東京には3,000万の人が居住する(訳注:首都圏人口のことと思われる)が、一人の女性が産む子どもの数は、0.99人に低下している。

 小泉氏は日本における一連の困難な改革を成し遂げてきたが、出生率問題への対処では壁に突き当たり、失敗している。、再三にわたって、適切な戦略をもっているのか質問されてきたが、その都度、ない、と答えている。

 人口が自然減少する年がやってくると、漠然と予想されていたが、実際には予想よりもはるかに早く到来した。首相の陽気な「犬のようにたくさん産め」発言でさえ、「明らかに、人口減少にうろたえているように聞こえる」と政治アナリストたちは語る。

 2005年の最後の国会で、内閣は、日本の迫りくる人口統計上の大変動を回避する最後の抵抗として、第2次男女共同参画基本計画(訳注:2005年12月27. 日閣議決定)を表明した。一見したところ不可能と思えるこのプランは、日本の女性たちが、家庭にいてもっと多くの子ども持つ状況を作り出すためにも、もっとハードに働く状況を作り出すために策定された。

 その根底には、女性たちが今より家族数を増やすのを妨げている障害のいくつかを取り除く労働状況改善のための総合政策こそ望まれていて、それこそ新しい動きだ。対策にはフレキシブルな労働時間の導入や不況によって空いた何百もの店舗を育児施設に変えるという提言が含まれる。

 ところがこの基本構想はまた、人口統計上のもう一方の問題にも対処しようとする。すなわち、人口が減少するのと同時に労働力も減少しすぎて、場合によっては経済上の悲観的な結果をともなう。政府の解決策は子育て後に、より多くの女性たちが仕事に復帰するような気にさせることだ。

 同プランは、「女性の再チャレンジ支援」と下手な名もつけて、小泉氏自身の手で閣議を通過させたが、企業や政治分野でリーダーシップをとる女性たちの世代をつくるが目的だ。

 日本ではおよそ70%の母親が、子どもを産むと職場に戻らない。この傾向は部分的には文化的なものであるが、その多くは、仕事に復帰する上では現実の問題をどうにかしなければいけない。つまり、女性たちは、子どもを持ったがために去ることになった良い職場に戻ることはほとんど不可能である、と気づくわけだ。

 このことで日本の女性たちは、キャリアをとるか、母であることをとるか、という厳しい選択を強いられるが、今の世代は、ますますキャリア追求に関心を示している。

 フレキシブルな労働時間を導入して積極的に母親が職場に戻ることを奨励することで、このプランは子育てがキャリアの妨げにならないものにするのを目指している 。

                (以上)

 この「犬のように」発言は、岩見さんはご存じなかったし、私も、もちろん知りませんでした。ブログに書かれた天木さんだって、「サンデー毎日」で知ったのでしょうし。

 そこで捜したところ、ちゃんと首相官邸のサイトに、平成18年1月4日付で掲載されていました。

 小泉総理大臣年頭記者会見がそれです。

 確かにありました。該当箇所を引用します。

 今後、少子化が進んでいく、子育てをいかに楽しめるような環境にしていくか、子どもたちは我々社会の宝であると、国の宝であると、社会全体で子どもたちを健全に、健やかに育てていこうと、そういう環境をつくっていくのがより一層大事な時代になったと思います。


 今年は、犬年でありますが、犬は子どもをたくさん産む、そしてお産も軽いそうです。犬にあやかるわけではありませんけれども、多くの方々 が子育ては楽しいぞと、子どもを持つことは人生を豊かにすると、そのような環境整備に多くの皆さんの知恵を借りて邁進していきたいと思っております。


(以上)

 うーむ、記者を前にして、国民一般にこれを語りかける様子を想像すると、やはりおぞましさが先に立ちます。日本の、ことに年輩の男性がよく持っている女性を見るある種の目も感じますし。

 それに、こうした首相を戴いていることが恥ずかしくなるようなタイムズの文面。読んでいるうちに、頭に血が上ります。
 岩見さんが言われるように、ロンドンの日本大使館は、こうした報道にしかるべき対応はしたのでしょうか。

 文化の違いもありますが、これを書かれたレオ・ルイスさんは年頭早々、女性を犬になぞらえた首相の言葉に、さぞびっくりしたことでしょう。

 首相としての最後の年頭会見で、犬をお手本にしたこと以外は建設的な少子化対策を何ら示せなかった首相の見識にも驚いたことでしょうね。

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米国議会に慰安婦問題はどう報告されたか――【結論】部分全訳

前エントリーでお知らせした米国議会調査局の「慰安婦システム」に関する報告書のうち、4ページにわたる【結論】部分の全訳を掲載します。

 ちょっと長いですが、この報告書が下院議員に配布されて、審議の参考にされるのでしょうね。

 特に最後の部分については私たちも意見の分かれるところだと思いますが、一応、米国でこのような捉え方がされていることを知っていてもいいかな、という気持ちです。

【結論】


 1992年以来、第2次世界大戦の前から戦中にかけて、慰安婦システムの設置・運営に関わった日本軍と日本政府の役割を十分認めたことに疑いの余地はほとんどない。しかし、2007年3月の安部首相の物議をかもした発言以前でさえ、多くの人の目から見れば、歴史に関係する日本の行状をめぐる論争で、たとえば小泉首相の靖国( 戦死者が祀られているが、また14人の戦犯も同時に祀られている)参拝、歴史教科書の記載内容、そして前述の文科相の言葉のような個々の日本の政治リーダー達の言葉をめぐって繰り広げられた論争で、自らの非を認めたことにも説得力がなくなってしまったと言うものもいる。認める認めないの争いは歴史教科書の記載内容を主な戦いの場にして、現在の日本でも続いている。さらに、教科書からは慰安婦システムの解説が省かれる傾向もあって、慰安婦たちへの書簡の中で、日本は「過去の歴史を直視し、正しくそれを後世に伝えねばならない」と述べた総理たちの言葉に疑念が生じている。


 


 慰安婦問題は、日本人は、1930年代から第2次世界大戦にかけての自国の行状をいかに見るべきか、という日本におけるより大きな議論の一部である。自民党「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」小委員会に代表されるような日本の歴史修正主義者たちは、この時代の行為に対する重大な罪が免除されることを求めているようだ。歴史修正主義者たちに反対するものは、日本は自分たちの行状の負の側面を認め、将来の世代にこれらのことを教えるべきだ、と主張する。歴史修正主義者たちの懸命な取り組みの最新例は、また別の歴史問題を含んでいるが、沖縄戦の間(1945年4〜6月)何千人という人びとの集団自決で日本軍の役割を記述したくだりを高校の歴史教科書から削除させた文科省の裁定だった。


 


 アジア女性基金では、日本政府と基金の支援者およびリーダー達の手で、元慰安婦への補償と支援に、誠実な努力がなされてきたようだ。話し合いと同時に、いくつかの政府は、協力することでアジア女性基金を受け入れたと思われる。


 


 アジア女性基金の、償い金の支払いか公式の日本政府補償金の請求か、という論議を呼んだ問題は、際立って法律論対道議論の問題である。日本政府は、対日講和条約(訳注:サンフランシスコ平和条約に同じ)、諸外国との日本の補償協定、そして1965年の韓日正常化条約の文言に基づく確かな法的地位を得ているように思われる。2006年2月の「ジュvs日本」の最高裁裁決は日本政府の立場を強化したように見える。しかし、公式補償要求の中には強い道義的な要素が含まれている。アジア女性基金を擁護するものでさえ、日本はドイツの例にならって、強制徴用された労働者や捕虜たちといった他の虐待を受けたグループへ補償する追加的な官民合同の基金を設立することができたものを、という人がいる。そうなった場合日本が反転に出て、1945年の日本の都市への焼夷弾爆撃(1945年3月9日の東京大空襲に始まるが、東京大空襲では推定で8万かそれ以上の日本人が死亡した)と1945年8月の原爆に対する補償を公式に米国に求める可能性も含めて、予測のつかないことが起こる。


 


 日本政府は慰安婦たちへ公式謝罪するとき、二つの声明を引き合いに出した。1993年の河野談話とアジア女性基金からの支援を受け入れた元慰安婦たちへの総理たちの書簡である。総理たちの書簡には、総理が、同書簡の中で「日本国首相として」語っているということを、はっきりと述べている。この書簡は、総理が替わってもすべて同一の文面だが、「おわび」という言葉を1度ならず使って、これを書簡の受取る人というより、むしろすべての慰安婦たちに話しかけている。これを批判する人たちは不十分だと言うが、不十分と考える理由を詳しくは述べていない。謝罪にふさわしい形として日本の議会による決議案を提案する者もいるが、全会あげてそうした決議案に賛成する可能性はありそうにも思えない。


 


 2007年3月の安部首相の発言のなかには、河野談話と総理たちの書簡の肯定も含めて、非を認め、謝罪する口ぶりが続いているものもある。しかし、それ以外は、河野談話と総理たちの書簡に言われていることを否定するように見える。安部首相が慰安婦システムと慰安婦徴募の一


要素を強調するのには、日本軍が同システムの他の面(輸送、慰安所の設立と運営、慰安所の女性達の管理)で果たした深い役割を最小限にとどめる効果がある。徴募の大部分は、とりわけ朝鮮では、軍隊が直接行ったわけではない可能性はある。 けれど、軍隊が強制的な徴募を行った証拠を安部内閣が否定するのは、1992〜1993年に政府報告書をまとめた日本政府の調査者たちになされた証言や異なるアジアの国々とオランダ出身の200人近くの元慰安婦たちによる強制徴募の証言に反し、これに加えて田中ゆきの著書『従軍慰安婦』に引用された400人の証言にも反している。


 


 こうした女性たちの証言の信憑性が、一方で安部内閣と自民党「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」小委員会間の論争の重要ポイントになりながら、また他方では同政権と河野談話および1992〜1993年の日本政府の報告書との論争の重要ポイントになっているようだ。河野談話と政府報告書は、ある程度、元慰安婦たちの証言に基づいている。河野洋平、現衆議院議長は、2007年3月30日に、1993年の談話は16名の元慰安婦の証言に基づいており、そのような酷い苦痛を体験したものでないと分からない状況をくり返し説明してくれたと述べた。その反対に、2006年3月16日のものも含めて安部内閣と「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」が表明した強制の証拠がないという見解は、そのような証言は信じるに値する証拠とはならない、としているようだ。聞くところによると、以前安部首相は、議員の一人に元慰安婦たちの証言を信用できるかどうか問われて、答えようとしなかった。安部内閣と「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」小委員会は、主として自分たちの見解を朝鮮の状況(慰安婦の徴募の大部分が、物理的な強制よりもむしろ、甘言を用いたり家族に圧力をかけたりして為されたようだ――ただし、力ずくで誘拐されたと主張する元慰安婦たちもいる)を基に論じていると思われる。さらには、暴力的、強制的徴募の証拠がないという主張は、7人の日本軍将校と4人軍隊に雇われた民間人の、オランダ領東インド(現インドネシア)のオランダ人女性および他の女性たちへの売春強要とレイプに対するオランダ戦争犯罪裁判の認定および評決の裁決(3人の死刑を含む)を無視、もしくは否定するものと思われる。このことから、安部内閣は、1951年の連合国と日本の間で結ばれた講和条約(訳注:サンフランシスコ平和条約に同じ)の第11条を否認しているかどうかという、非常に重要な疑義の生じる可能性がある。サンフランシスコ平和条約第11条には、「日本は、極東軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の判決を受諾し……」とある。


 慰安婦証言を否定した結果明らかになったことは、1970年代以降北朝鮮が日本の民間人を拉致した説明をしろ、という日本政府の要求に対する国外からの支持の衰えである。これは2007年3月24日の「ワシントン・ポスト」の社説「安部晋三の2枚舌」で指摘されたが、北朝鮮には拉致に対する説明責任があるとする安部首相の強い主張と、「第2次世界大戦中の何万もの女性たちを拉致してレイプし性奴隷にしたことに対する受容と責任を逆戻りさせる安部首相の類似の運動」とを対比させた。社説は断言する。「もし安部氏が日本のした民間人拉致の運命を学んで国際的な支援を求めるのであれば、正直に自身の犯罪の責任を受け入れ、彼が中傷した犠牲者たちに謝罪すべきである」。このように、100人を越す元慰安婦たちの証言を否定することには、第三者が、北朝鮮が日本の民間人を拉致したという主張の信憑性に疑問を持ち始めるかもしれないという立場に日本政府が置かれそうである。


 


 首相の物議をかもす発言は、自民党「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」小委員会を支持しないのであれば、同小委員会をなだめるのを意図しているように見えるが、この小委員会は、河野談話の見直しかもしくは撤回をさせて、おそらくは慰安婦システムに対する日本軍の責任を免除させたいと望んでいる。これらの議員たちが公表してきた研究と、日本のメディアと大衆のこの研究に対する反応は、現在と将来の日本における歴史修正主義者たちの影響を見る上で、重要な指標になるだろう。


 


 慰安婦たちに関する議論の多くで見逃された問題は、連合国と被占領国の元慰安婦たちが、補償と支援の両方、もしくはそのどちらかをアジア女性基金から受けとるかどうか決める自由が十分にあったかどうか、ということである。フィリピン、インドネシア、そしてオランダでは必要なだけの自由があったようだが、台湾や韓国ではアジア女性基金からの支援を受けるのを思いとどめたようだ。韓国自身が元慰安婦たちのために豊富な資金で自身の基金を用意したにもかかわらず、そうでなければ1997年にアジア女性基金からの支援を求めていたであろう朝鮮女性たちに対する圧力と脅しの道具として、同基金や別の手段を利用した。慰安婦問題に関する韓国報道機関のレポートは、ほとんどの元慰安婦はアジア女性基金が「非公式」状態のために支援の受け取りを拒否しているのであって、これを申し出る女性は 「数えるほどしかいない」と主張することで、往々にしてアジア女性基金をおとしめている。韓国政府はもちろんのこと報道機関も、1997年のエピソードに見られる自国の元慰安婦たちへの韓国側の脅しを、引き続き認めようとはしていない。


 


最後に、アジア女性基金と韓国の政府基金と台湾の記録から示唆されるのは、これらの基金に応えて申し出たおよそ500人の元慰安婦たちをはるかに超える人数の元慰安婦たちから、どんな補償/援助のプログラムも反応を引き出せそうになかったことである。元慰安婦の過去を明かすことが社会的な不名誉であることから、前に踏み出すはずだった多くの女性たちを今だに思いとどまらせたようだ。 


                           (以上)


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憲法改定と日本の孤立


 3月26日にガーディアン 紙「直言」に掲載されたフランシス・フクヤマの小論。
 何気なく読んで想像以上に日本の現状を掴んでいることに驚きました。おまけに渡部昇一が聴衆を前にして具体的にどんな話しをするのか、はじめて知りました。

 戦前復帰を画策しながらアメリカにすり寄る姿勢が矛盾せずにどこでどう折り合っているのか、わたしには理解できないこの方は、フクヤマ氏にこうまで言われてどうするのでしょうか。

 以下、フクヤマ氏の小論の訳です。

 安倍晋三が首相の座についてやっと半年だが、アジア中の怒りを買い、さらに重要な同盟国アメリカでは入り交じった感情を引きおこしている。とはいえブッシュ政権は、安倍に挑発的な態度をとらせないように影響力を行使するだろうか?

 安倍の前任者小泉純一郎は型破りのリーダーで、日本経済を復活させ、郵政改革をし、長期政権自民党の派閥体制をこわした。けれど小泉は、新しい日本ナショナリズムも許容し、靖国神社へ年に1回は参拝して中国と韓国を敵にまわした。どちらかといえば、安倍の方は、独断的で非を認めない日本をつくりあげることに一層邁進している。


 靖国論争は中国と韓国が政治的な優越を狙って日本を困らせるために使う歴史問題だと信じている人は、多分論争に多くの時間を費やすことはない。問題は、同神社に祀られた12人のA級戦犯ではない。ほんとうに問題になるのは、隣の靖国軍事博物館、遊就館だ。


 同博物館に展示されている三菱の零戦、戦車、そして機関銃のそばを過ぎると、「近代日本史の真実」を復元した太平洋戦争史だと分かる。それに続いて国家主義的なナレーターの声が聞こえる。つまりヨーロッパの植民地保有国の犠牲者である日本は、列強から他のアジアの国々を守ろうと務めたにすぎいない、というわけだ。たとえば、朝鮮を占領して植民地にしたことは「協調関係」として描かれている。南京やマニラでの日本軍国主義の犠牲者たちの記述を捜しても無駄だ。


 この博物館は多元的民主主義の中にある多くの見方のうちのひとつだ、と言い逃れることができるかもしれない。けれど日本には、20世紀の歴史について他に代わりとなる見方を展示する博物館がない。歴代日本政府は、民間の宗教組織によって運営される靖国博物館を隠れ蓑にしてきて、そこで表明されている見解に責任を負わなかった。


 納得のできない姿勢だ。実際、ドイツとは異なり、日本は太平洋戦争に関する自身の責任をついぞ受け入れることがなかった。社会党員の村山富市首相が1995年に公式にこの戦争に対する謝罪をしたが、日本は真の意味で責任の範囲をめぐる討議を行ってこなかったうえに、本気になって遊就館の見方に代わる記述を広めようとする努力を1度たりともしていない。


 私が日本の右翼と接したのは1990年代の初めで、日本で渡部昇一と2人でパネリストになった時だったが、彼は日本の出版社(私には未知の出版社だった)が私の著作『歴史の終わり」と『最後の人間』の日本語訳のために選んだ人だった。上智大学教授の渡部は、『「NOといえる日本』を書いた国家主義的政治家で現東京都知事、石原慎太郎の共同執筆者だった。


 2、3回会うなかで、私は渡部が大勢の聴衆を前にして、占領していた関東軍が中国を去るとき、いかに満州の人びとが目に涙を浮かべて日本に感謝していたか説明するのを聞いた。渡部によれば太平洋戦争とはつまるところ競争であり、米国が非白人を抑えつけておくことを決意していたせいなのだ。したがって渡部はホロコースト否定論者に相当するが、ドイツの似たもの同士と異なり、共感する大勢の聴衆を簡単に魅了してしまう。(私のところには、日本の著者たちから、いかに南京大虐殺が大きなごまかしであったか釈明する本が定期的に送られてくる)。


 その上、最近、小泉の靖国参拝を批判するものに対して、たとえば元首相候補加藤紘一の自宅に火炎瓶が投げられたように、国家主義者たちによって物理的な脅迫が用いられた不穏な事件がいくつか続いた。(一方で、普通は保守的な読売新聞の社主が小泉の靖国参拝を非難して、戦争責任に関する興味をそそられるシリーズものの記事を発表した。


 このことで米国はむずかしい立場に置かれたままだ。多くのアメリカの戦略家たちは、日米安全保障条約外に、なんとしてでもNATO型対中包囲網を構築したいと考えている。冷戦末期以来、米国は日本の再軍備を後押ししてきて、戦後憲法の第9条の改定案を公式に支持してきたが、この9条は日本が軍隊を保持すること、あるいは戦争を遂行することを禁じている。


 しかしアメリカは自らが望んでいることには注意を払うべきだ。極東におけるアメリカの軍事的立場全体の正当性は、主に自衛という日本の主権者に帰属する機能を米軍が果たしていることに基づいている。日本の一方的な憲法9条の改定は、新しいナショナリズムを背景にした観点に立つもので、アジアのほぼ全土から日本を孤立させるだろう。


 憲法9条の改定は長い間安倍の基本方針の一部になってきたが、それを彼が強引に進めるかどうかは、大部分米国の親密な友人たちから得る助言のようなものに左右される。ブッシュ大統領はイラクにおける日本の支援に感謝していることから、彼の「親友ジュンイチロウ」には、日本の新しいナショナリズムのことで口出しするのを控えていた。今や日本が小規模な派遣部隊を撤退させてしまっているので、おそらくブッシュは、安倍に対して率直にものを言うことになるだろう。                              (以上)


 アメリカのアジア戦略、アジア版NATOを作ろうとする動きについては昨年10月31日に田中宇さんが「アジアのことをアジアに任せる」で書かれています。


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