作家の立松和平さんが、叔父の所で読んだ14日の日経に、「人類の愚かさの物語」と題した一文を寄せていました。
一部を紹介します。
……
2007年8月にロシアの探検家が開票の下に潜水艦で潜り、北極点下水深4,000メートルの海底にさび止めをした金属のロシア国旗を設置し、親プーチン政党から政党の紋章である毛皮つきの大きな北極グマのおもちゃを送られたという。この地域の石油と天然ガスはロシアのものだと主張したのである。
先日テレビでニュースを見ていたら、この金属の国旗が写され、ロシア、アメリカ、カナダ、デンマーク、ノルウェーなどが採掘権を確立すべく躍起になっているとの解説がなされていた。 ……
北極の氷が溶ければ、北極グマは生きられなくなることを悲しむのではなく、石油が掘れると喜ぶ人がいるのだ。石油はおそらく莫大な富を生むだろう。その石油はまた地球温暖化の主要な原因となる。
寓話のような話しである。 ……
大航海時代以降、つまり、地理上の発見以降、欧米列強が競って植民地獲得競争に乗り出した愚を、また北極海の海底で行おうというのでしょうか。
おまけに北極海には先住民族がいないだけに、なおさら早い者勝ち、ということになるというのでしょうか。
これと同じくらい怪しいのが、もういろんな人が言及している「宇宙基本法案」。
ちらっと読んでみても、なんだか“ごった煮”状態で、ほんとうは何が言いたいの? と議員さんたちに尋ねたい。
だって、
「宇宙開発に関する条約その他の国際約束の定めるところに従い、日本国憲法の平和主義の理念にのっとり、行われるものとすること」とか言ったり。
という一方で、
「国際社会における我が国の利益の増進に資するよう行われなければならないこと」とか、
「国は、国際社会の平和及び安全の確保並びに我が国の安全保障に資する宇宙開発を推進するため、必要な施策を講ずるものとすること」とか。
この内の前者は「第一 総則」の「二 宇宙開発に関する基本理念 5」で、後者は同じく「第一 総則」の「二 宇宙開発に関する基本理念 2」で言われているわけですが。
とにかく、「国、地方公共団体、大学、民間事業者」との連携を強調するように、国を挙げての宇宙開発で、
「民間事業者の能力を活用し、物品及び役務の調達を計画的に行うよう配慮するとともに、打上げ射場(ロケットの打上げを行う施設をいう。)、試験研究設備そ の他の設備及び施設等の整備、宇宙開発に関する研究開発の成果の民間事業者への移転の促進、民間における宇宙開発に関する研究開発の成果の企業化の促進、 宇宙開発に関する事業への民間事業者による投資を容易にするための税制上及び金融上の措置その他の必要な施策を講ずるものとすること」
と、「第二 基本施策 四」に民間の宇宙産業振興のためにはあらゆる手段を執るぞ、といっているあたりも、なんだか怪しさいっぱい。
「第三 宇宙基本計画 七」では、
「政府は、宇宙基本計画について、その実施に要する経費に関し必要な資金の確保を図るため、毎年度、国の財政の許す範囲内で、これを予算に計上する等その円滑な実施に必要な措置を講ずるよう努めなければならないこと」とも言ってますねえ。
この頃、税金をどのように分けるか、という話しに敏感になってしまったので、「国の財政の許す範囲内で」などという文言を見ると、福祉や医療に関する予算をけずっても、なんとしても、宇宙の軍事利用のためには予算をつけるゾー、という意思を感じて、怖ろしい。
そう、官僚言葉の意味するものは、私たちの理解と違う。
そういえば、テレビアニメ等のSFものというか、宇宙を舞台にしたものも、宇宙制覇を企む悪者とそれを阻止するいいものに分かれているような気がするなあ。
でも、アニメだけではないらしい。
「第二 基本施策 十」には、
「国は、国民が広く宇宙開発に関する理解と関心を深めるよう、宇宙開発に関する教育及び学習の振興、広報活動の充実その他の必要な施策を講ずるものとすること」
と謳っていますしね。
有権者であり、納税者でもある私たちにとって見逃せないのが、従来の防衛予算に加えて、この宇宙進出予算で、確実に税が垂れ流されることになること。
際限のない宇宙軍拡競争になるのが怖ろしい。
増税が押し寄せてくる日本社会で、税のうちどれほどがどぶに棄てられていくことになるのでしょうか。
ご参考までに、
アメリカと中国が、いったいどれくらい軍事宇宙に対して、真剣に取り組んでいるかということのごく一端を感じ取っていただければ幸いである。これを読め ば、日本も軍事宇宙の世界に乗り出すべきだと思っていた人は、自分が途方もなく人も金も知恵も軍事力も必要とする世界を夢想していたと気づくであろう。軍 事宇宙参入の夢から目が醒め、日本の進むべきは科学目的の宇宙開発だと思う人が増えることを祈る。



