投稿日:2008-05-30 Fri
何気なくのぞいたFACTA編集長阿倍重夫さんのブログ。29日のエントリーは「1957年のグールド」でした。グレン・グールド……絶頂期の31歳でステージを去り、その後はレコーディング・スタジオにこもっての音楽活動に専念した伝説のピアニスト。82年に50歳で亡くなっています。
たまには政治の話題を離れて、今日はグールドのことを思い出そう。
グールドには15,000冊の蔵書がありましたが、最後の最後まで手元に置いて読み返したのはたった2冊でした。
1冊は聖書。
あとの1冊は、あの漱石の『草枕』だった、ってご存じですか?
カナダ、オタワの国立図書館にあるグレン・グールド・アーカイヴには、彼が書き込みをした『草枕』が今も保存されているということです。
グールドと漱石。グールドと『草枕』。
意外や意外の組み合わせ。
でも、漱石も『草枕』も知っている私たちには、何となく分かる気もします。
35歳の時、グールドは列車の中で知り合ったひとりの科学者に教えられて『草枕』と出会ったそうです。話が弾み気をよくしたグールドは、この化学を教える大学教授に自身のレコードを送り、教授は帰宅して『草枕』を送ったのだとか。
それから15年間、グールドは『草枕』を愛読し、計4冊を所持していたといいます。そのうち2冊は、どういうわけか日本語で書かれたものなのだとか。
グールドの蔵書には『草枕』以外には『それから』『道草』『吾輩は猫である』『こころ』『三四郎』『行人』等がありました。
さらにグールドは、ラジオ番組のために『草枕』の第1章を朗読したテープも残しているとのこと。
そういえば、何がなんだかよく分からずに読んだ『草枕』の第1章で、高校生の私は「陶淵明」の名を知りました。
採菊東籬下 (菊を採る東籬のもと)
悠然見南山 (悠然として南山を見る)
の詩があげられて、たしか垣根の向こうに隣の娘が顔を覗かせているわけでもない、と非人情の世界を語るところが何だかとてもおかしかったのを覚えています。
後日漢文で陶淵明の詩をさらに知り、中国の詩人の中で一番好きになりました。
漱石が『草枕』の中で上げたもうひとりの中国の詩人が王維でした。
李白でも杜甫でも白居易でもない、唐の詩人の中では、私は王維が一番好き。それでいつか中国の友人に王維の詩の読み方を教わりましたが……今は霧の彼方です。
「王維」という名の読み方だけは覚えています。ちょうど、英語の“one way” と発音が似ていました。
ああ、そんなことをつらつら考えていると、無性に『ゴールドベルク変奏曲』が聴きたくなりました。今日FMでチラッと耳にした日本人横山幸雄さんのも良かったです。
あまりに情けない私たちの国の政治。
時にはそんなもの放り出して、しばし違った世界で遊びたいですよ。
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