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消費税増税のこと

慌ただしさにかまけていたら、もう4月。
気づいたことやら思いついたことやらを次々に下書きに回してはいますが、表に出すのには時機を逸した感 じ。
そんなこんなで、やっと更新です。

  村上龍さんのJapan Mail Mediaを久しぶりに読んで、気になったこと。
今の財政状況で社会保障の問題を考えるとき、消費税の増税以外、対応策はないのでしょうか」という問いに対する8人の識者の答えを勝手にまとめ。ちょっと参考になるかしら?

真壁昭夫(信州大経済学 部教授)
消費税の目的税化によって、社会福祉費用を賄うことは社会全般にとって受け入れやすい選択肢であるが、財政再建を図るためには、様々な政策(歳出の大胆な削減や、その他の税項目の導 入や税率の引き上げの合わせ技が必要
わが国の将来像を、国民全般にわたる広い範囲で議論すべきだ。

北野一(JPモルガン証券日本株ストラテジスト)
デフレ に陥ったからこそ、政府の財政赤字が膨らんだ
企業や家計がお金を借りず、経済活動が停滞したため、政府が仕方なく借金を重ね たということ。
政府の債務を削減するためには、デフレ脱却をまず考えねばならない。
歳出の削減には限界があ るので、歳入を増やせ、所得税や法人税は取りづらいので、消費税を上げろ、という財政再建至上主義は、そもそもデフレ的。
「平成22年度税制改正大綱」ではグローバル化を前提にして現状を分析しているが、グローバル化に価値を置く時代がこれからも続くかどうかは分から ない。

菊池正俊(メリルリンチ ストラテジスト)
消費税増税以外の財政赤字削減策としては、政府の資産売却を積極的に行うべき。
無駄な歳出を止めるべく努力が必要。
国民に負担増を求めざるを得ない中では、国会議員の定数削減や経費削減などの方策が必要。

津田栄(経済評論家)
輸出を新興国向けにシフトし、価格と人件費を抑制しても収益が過去の水準に戻ることは難 しい。
経済のグローバル化で、今や企業が国を選択する時代になり、海外移転を選択する可能性が大 きくなった。
消費税増税とともに所得税・法人税の減税を図るべき。
必要なもの以外の国家の財産も売却し、もうこれ以上の削減ができない、財源の確保ができないことを国民に示して消費税増税を理解してもらう手順が必要。
長期的な成長戦略を組み、国民が消費において将来への不安を感じさせないような政策が求められる。

杉岡秋美(生命保険会社勤務) 
公務員の人件費 や定数の削減、省庁・部局までの廃止、業務のNPO法人などへ置き換えといった議論が明確になされる前 に議論の枠組みが消費税の引き上げに限定されてきてしまった。ここで、消費税の引き上げを前提とした議論を許せば、官僚機構の効率化・縮小をはかる千載一遇のチャンスを失う
消費税を社会保障の 財源にあてても、デフレがとまらないかぎり財政の悪化は避けようがない。
デフレ圧力下にあることを考えれば、他の予算削減が間に合わないということであれば、選挙公約を果たすために国債の増発というのは十分合理的な政策である
政府部門の効率化と予算の組み替えが課題。
次の景気サイクルの上昇期のときにすばやくプライマリーバランスを回復し、国債残高の縮小に向かえるような、スリムな政府体質が必要。そのうえで、政策目的のための 消費税の引き上げが必要であるというのであれば、そのとき検討すべき。

中空麻 奈(BNPパリバ証券クレジット調査部長)
現在の財政状況で社会保障の問題を本気で解消しようと考えるなら、解決方法は消費税を引き上げる以外には“ない”
財政赤字を減らしていくためには歳入を増やす。歳出が減る可能性はない。そのた めには、1)基礎控除額の削減、2)法人税や累進課税の引き上げ、3)消費税の引き上げがある。しかし前2者のこう かは程度が知れているので、消費税の引き上げしかない。
稼得能力の高い会社や人が、ホンコンなどへの海外移転し かねないので累進課税や法人税の引き上げは勤労意欲が無くなり、活気ある日本を作れない。目的税という形で日本国民の自覚を促しつつ、消費税を引き上げるべきだ

山崎元(経済評論家・楽天証券経済研究所客 員研究員)
将来の増税について消費税を対象にすることについて反対はしないが、釈然としない点がある。
福祉のみに使う目的税とするというのは、意味の無い制約であり、国民に増税を認めさせるための方便でしかない。 
所得税累進税率の引き上げには賛成できない。
法人税率の引き上げは、ビジネス立地としての日本を不利にするので拙い。
相続税は、控除の範囲を狭めて、もっと課税対象になる人を増やしていい。


徴税コストと能率の点から考えても消費税率は現在よりも高い方が合理的だが、現段階で消費税率の引き上げを急ぐことには疑問。
現在の金利と物価を見、国債の消化・保有状況を見ると、一年や二年、財政再建を先送りしても、国債によるファイナンスは十分つながる。

土井丈朗慶應義塾大学経済学部教授)
年金保険料が2017年まで毎年引き上げられることが決まってい る。
従って社 会保障の財源には、消費税以前に、社会保険料の引き上げで対応することが織り込み済み。
これからの社会保障 財源を社会保険料を中心に賄うと、勤労世帯に負担が重く及ぶことになる。
消費税はできるだけ増税しない、となると、世代間格差をさらに拡大させることになる。
既に年金保険料を納め終えた高齢者に、消費税という形で足らない給付財源を納めてもらい世代間格差の拡大を防ぐ。
消費税は、生涯所得に対して概ね比例的であって、逆進的でもなければ、累進的でもない。
消費税は、所得税や法人税などよりも、経済成長(より厳密には経 済の効率性)を阻害しにくい。
消費税は、世代内の所得格差是正はできません。世代内の所得格差是正をする必要があるなら、所得税の累進構造にしかるべき修正を加えるべき。
消費税増税とともに所得税制の改革も合わせて行うことで、日本の税制をよりよくできる。

***以上***

う~ん、皆さんおおむね消費税増税に肯定的ですが、そうでもないのが
JP モルガン証券日本株ストラテジストの北野一氏と生命保険会社勤務の杉岡秋美氏。

北野一氏の説明はひと味もふた味も違った見方を提供していて、大いに興味を引かれました。特に、「消費税を軸にするべきか否かは、世界の政治サイク ルに対して、どのような大局観を持つかの勝負になってくる」という点に。
なんでも、米国の政治思想は約30年の周期で資本主義的価値観と民主主義的価値観の間を揺れ動いてきたとか。グローバリゼーションはこの資本主義 的価値観の申し子であると。

強欲資本主義の絶望的な面を見せつけられている私たちにとって、ちょっぴり希望も湧いてくるような話です。

また、「誰も、どうすれば経済が成長するのか分からない」「『成長戦略』という言葉は『企業寄りの政策を取れ』ということの言い換えだ』という北野氏の言葉は、何かもやもやとして適切な言葉が思い浮かばなかった私の胸にすとんと落ちるものでした。
福祉のみに使う目的税とするというのは、国民に増税を認めさせるための方便でしかない、という山崎さんや議論の枠組みを消費税の引き上げに限定する前にすることがあるだろうという杉岡秋美氏の指摘にも納得。

これに対して消費税増税を積極的に支持するのはメリルリンチの菊池正俊、経済評論家の津田栄、BNPパリバ証券の中空麻奈の各氏。かなり先鋭的で、私など恐怖さえ覚えます。信州大教授の真壁教授、評論家の山崎さんあたりは、一応は支持、あるいは肯定。

政府の資産を売り払え、という菊池氏と津田栄氏の論は西川郵政の下でかんぽの宿等がどんどん売り払われ転売されたことを連想させます。
行政のムダを排除し「必要なもの以外の国家の財産も売却し、もうこれ以上の削減ができない、財源の確保ができないことを国民に示して消費税増税を理解してもらう手順が必要」という津田氏の言い方からは、首相当時の小泉純一郎氏が「歳出削減をどんどん切り詰めていけば、やめてほしいという声が出てくる。増税をしてもいいから必要な施策をやってくれという状況になってくるまで、歳出を徹底的にカットしないといけない」と言いながら社会保障費をカットしたことを思い出しました。

真壁氏は「国民サイドから見ても、消費税を社会福祉の目的税にすることは、分かり易い政策運営の方法だと思います」「消費税の目的税化によって、社会福祉費用を賄うことは、社会全般にとって受け入れやすい選択肢であることは間違いないと思います」という具合に、「と思います」の言い方で少々曖昧な断定をしてます。
私など、ちっとも受け入れやすい選択肢であるとは思えません。

で、この真壁氏は竹中平蔵・榊原英資氏らとの対談でフランスのような高福祉型の社会を目指すべきだと主張する榊原氏に対して人口1億人以上では、世界中に高福祉社会は存在しない」と竹中氏が指摘したことが強く印象に残ったそうです。
人口の多い国では高福祉社会は無理だ、とでも言いたげな論ですね。なんだか相手を煙に巻く竹中論法でごまかされたような感じ。
財政再建のためには「歳出の大胆な削減」も重要な選択肢になるはず、という大ざっぱな言葉を読むと、なんだかこの方は竹中論法と親和性が高そう。

山崎元さん
「将来の何れかの段階で増税を行う場合、消費税を対象にすることについて、私は反対しません」「消費税率引き上げを急ぐことには少々疑問」と言ってますから、消極的な消費税増税支持というところでしょうか。
消費税を「福祉のみに使う目的税とするというのは、意味の無い制約であり、国民に増税を認めさせるための方便でしかない
」という山崎さんの言に溜飲が下がるのは確かなのですが、山崎さんは所得税累進税率と法人税率の引き上げには反対しています。そのあたりは納得できませんね。

慶応大の土井教授は色々と消費税の利点を挙げてます。
現在の年金世代が将来の年金世代に比べて負担が軽すぎるという世代間格差の問題を消費税増税が解決するとまでは言ってませんが、その軽すぎた負担を消費税で補ってもらうというような話。
しかし周囲を見渡すと、比較的潤沢な年金で老後を満喫しているのはやっぱり大手企業のリタイア組。公務員一般もいいようですが、元キャリア官僚等、上位階級の公務員は特別いい。国民年金だけに頼らざるを得ない人は、それなりの蓄えが必要。居住型老人ホームで快適な生活を送る叔父夫婦は、自営業でしたから毎月かなりな額の貯金を取り崩しています。

また土井氏は、
消費税は逆進的でもなければ累進的でもない、というのですが、食料品や生活必需品まですべて同じ税率なのですから、所得が低ければ、それだけ負担が重く感じられます。

と、いろいろ考えていくと、福祉を目的にしますから消費税率を上げさせてくださいと言われても、何だかやっぱりどこかでごまかされるような気がするのは、これまでの政治で私たちがそう学習したせい。おいそれとは頷けませんね。

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