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なかのひと

「お前は私の息子じゃない!」 他、住民基本台帳を使ったリクルート
「お前は私の息子じゃない!」

 ベトナムの戦場から帰ってきたとき、元海兵隊員アレン・ネルソンさんは、母親にそう言われたそうです。

 ニューヨーク、ブルックリンのスラム街に生まれたネルソンさんは、60年代、高校を中退した後、18歳で海兵隊に志願しました。
 徴兵制をとる当時の米国にあっても、「試験」が課された特別な部隊、海兵隊。そこに入ったことを知らせたとき、お母さんは怒り、がっくりして、泣き崩れてしまったといいます。

 ネルソンさんにとって軍隊は、貧乏暮らしからの「唯一の突破口」。

「ヴェトナムの人たちを共産主義から解放する『自由の戦士』と煽てられ、鳴り物入りでヴェトナムに送られ」た若い海兵隊員は、「深夜、あるいは早朝に、人びとがまだ寝静まっている村に火を放ち、逃げまどう人びとを見境なく撃ち殺しました」。

 ジャングルにいたとき、誰よりも会いたかったママ、息を引き取る戦友たちの最後の言葉「ママ」。
 その‘ママ’から自分の息子じゃない! といわれたネルソンさんは、ママの息子に戻るために、つまり戦場に往く前の自分に戻るために、実に15年以上の歳月を費やしています。優れた精神科医の助けを借りながらもこれだけの年月がかかっています。

 18年かかって大人になり、殺戮の現場に投げ出された後、成長にかかったのと同じくらいの年月を経て生まれ変わり、やっとその体験をのり超えることができたともいえそうですね。

 さて米軍が2001年10月に決行したアフガニスタン侵攻は、当初「無限の正義作戦 (OIJ: Operation Infinite Justice)」と呼ばれ、後に「普及の自由作戦(OEF: Operation Enduring Freedom)」と改められました。

‘正義’とか‘自由’の旗印の下に、どれだけ多くの人が犠牲になったのか、今ここではふれないでおきます。

 2001年11月、テロ特措法の成立にともなって私たちの国もこのアフガン戦争に参加しました。 
 これがインド洋での、有志連合に対する無料ガソリンスタンド活動です。

 この活動の映像が、昨夕テレビで流されました。
 この時、指揮を執る自衛官の方でしょう、「我々はこの活動を‘一生懸命に(この語を使ったかは記憶に定かではありませんが、こうした意味の語を使ったのはたしかです)’やっているということを認めてもらいたい」と語っておられました。 

 この前だったか後だったかは忘れましたが、江田憲治さんも登場して、ここで給油されたもののうち85%がイラク戦争に使われた可能性があるという例の話しをされていました。またそのことを示していた米国海軍中央司令部&第五艦隊の記事は削除されてしまったことについても、番組で言及されていました。

 インド洋上での給油の大半がイラク戦に使われているようだという事実が明らかにされて2週間、やっと、一般の女性たちがよく見そうな番組でこのことが報じられたのは良かったのですが、同時に、一生懸命にやっているのだ、という現場の声も同じぐらいの重みで伝えられました。

 さりげなく、巧妙に、問題がすり替えられてしまったと思いませんか。

 一般のテレビニュースではそれほど報道されないイラク戦の内実ですが、イラクの人々が毎日毎日直面している酷い状況は、おそらくほんの一部が本やネットで伝えられているだけなのでしょう。
バグダード・バーニング」は、そんなイラクの人々の肉声が聞こえてくる、数少ない日本語サイト。

 で、‘一生懸命に’に‘誠実に’遂行される任務が、結果としてイラクの悲惨な状況に手を貸しているという事実を、私たちはどう受けとめるべきなのでしょうか。

 これについてはいろいろな意見があるかもしれません。
 でもここに使われた論理は、以前、現参議院議員の佐藤正久氏が90人の自衛隊員を率いてイラクから帰るとき、制服ではなくスーツを着用せざるを得なかったことについて、

「堂々と胸を張って、制服姿で帰りたかった。隊員たちに悲しい思いをさせた」(拙ブログ「人生いろいろ、自衛官もいろいろ」をご覧下さい)。

 と述べたときに使われたものと同じです。

 情緒に訴えて世論の喚起を狙った、といわざるをえません。

 民間航空機を軍事利用することは国際条約で禁止されていますから、民間航空機を利用してイラクから帰還する自衛隊員は、制服の戦闘服を着用することはできなかったのです。
 もしあえて戦闘服のまま民間航空機に搭乗して帰ってくるとなると、「民間航空機」ではなく「国の航空機」とみなされて撃墜される可能性があったわけですから。

 それを無視して「隊員たちに悲しい思いをさせた」と語る佐藤氏、そしてインド洋上で、イラク戦に使われる可能性の高い給油活動を「一生懸命にやっている」と述べる自衛官。
 さらには「認めてほしい」という言葉まで。語るのか語らされるのか。

 イラク戦争に荷担している活動はテロ特措法の枠外にあるのは確かだが、自分たちが一生懸命にやっていることだけは認めてほしい、というのはちょっと違いますよね。
 自衛官の方々が‘一生懸命に’、あるいは‘誠実に’職務を遂行されていることは十分推察されます。でも、だからといって法の枠外にある活動を正当化する根拠にはならないのでは?

 それを分かった上でメディアは、まあ、この番組は小宮悦子さんが出ていましたから、テレビ朝日の「スーパーJチャンネル」でしょうが、視聴者に‘一生懸命に’‘誠実に’行っている活動は‘善’である、認めるべきだ、というサインをそれとなく送っているのだと思います。

 このメディアの‘不誠実な態度’は、国民に対する背信行為だ、とさえいえるかもしれません。

 さて、貧しさ故に、徴兵制の世にあっても自ら海兵隊に志願したネルソンさん。
 今は米国も徴兵制ではなく志願制ですが、そのため新兵募集はとくに陸軍で大変なようです。札束攻勢を仕掛けていると聞きます。

 私たちの国でも自衛隊はリクルートに少々苦心しているようですが、「海上最強! 鋼鉄の城!」の「カイジョージエイタイ!」のCMには驚きましたね。

 さらに自衛隊が、高校生の個人情報を自治体に照会している、という話しを聞きました。

 そういえばgegengaさんも、高校3年生の子供さん向けに「「自衛官募集案内」というものが届いたとか言われてましたね。
自衛隊キターッ!!」で「なぜ、ウチに適齢期の子どもがいることが分かった?
どんな名簿を基にハガキを送っているのか、知りたいわぁ」

 とおっしゃってましたね。

 この「どんな名簿?」というのが、「住民基本台帳」ではないか、と思うのですが。

 それまで許されていた不特定多数の個人情報を大量に見ることは昨年11月施行の「改正住民基本台帳法」によって、若干の例外を除いてできなくなりました。
 その例外が「閲覧請求権を認める場合」とか「閲覧の申し出を認める場合」とかに定められていて、自衛隊がリクルート目的で閲覧する場合は、「国・自治体が法令で定める事務の遂行のために必要である場合に該当するのだと思います。

 で、多くの自治体で、自衛隊から照会があった場合は応じざるを得ないだろう、と判断しているようです。

 母子家庭を狙った犯罪が起こるなどして「大量閲覧制度」が問題になり法改正されたわけですが、上記のような抽象的文言の要件によって、本人の知らぬ間に一度に大量の個人情報が収集されているのが実態でしょう。
 
 明治に始まる日本の戸籍制度は、もともと徴税と同時に徴兵のために設けられたものでした。
 住民基本台帳にもその働きがあることが、この事例でよく示されていますね。
 
 国・自治体が法令で定める事務の遂行のために必要である場合不特定多数の個人情報を大量に見ることができるという規定は、このために置かれたのかな? と考えられないこともないなあ、と思う今日この頃です。

  
  
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  ↑ 雑談日記さんにお借りしました。ありがとうございました。

 

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