民営化は恒久政権の試み&保守が赤字を積み上げた
ことに民営化が恒久政権を目指した保守派の政策であること、さらには保守の共和党政権が赤字公債の発行という“打ち出の小づち様”の道具を手にして空前の財政赤字を積み上げてきたことは、私たちの国の状況にも通じるかもしれません。
見事に私たちの国の現状と重なる部分もあって、なんとも憂鬱になります。
以下はトーマス・フランクさんの話しの要旨です。
なお、*印は私の感想です。
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・7月29日アラスカ州選出の共和党長老の上院議員テッド・スティーブンズが石油会社VECO・コーポレーションから贈与を受けた等7件の罪状で起訴された。
*時事ドットコムでもこのことが報じられていますが、議会知日派として知られているため「日米のパイプ役が失われると懸念する声も出ている」そうですが、パイプ役の内容が問題です。
・他にも共和党員が数名買収と虚偽の罪で服役中。最近釈放されて社会復帰訓練所で暮らす元下院議員もいる。
ワシントンの政界には、ここ数年だけでも数百のスキャンダルがあって次から次へと報じられるが、新聞の第1面に載ることもあれば、紙面深く埋もれることも。
・長年にわたって、保守派は行政の市民サービスに不満をもっていて、それが保守派のアイデンティティのひとつになっている。
*市民サービスは必要ない、というのが保守派の考えでしょう。
・ 「最良の公僕は最悪の公僕」
1928年のクーリッジ政権時の米国商工会議所会頭の言葉。
この言葉が意味するところは次の通り。
行政に優れたもの、有能なものは要らない。優れた人、有能な人がいれば行政は機能して効果が出る。効果が出れば、人は自分たちの問題を行政が解決してくれると期待し始める。その後はどうなる? ただ衰退があるのみだ。
保守主義の歴史をひもといていくと、常に「行政には優れたものや有能なものは要らない」という考えにぶつかる。
・官僚制度と市民サービスについて、保守主義運動の中では特別の用語が用意されている。
それが恒久政権。
ブッシュ政権では統治のイノベーション、すなわち統治改革をおこなって恒久政権を目指そうとした。
ブッシュ政権の統治改革とは、連邦政府の種々の機能を民間の請負業者に任せること。
・ジャック・アブラモフに見られるように、保守主義は政治運動やイデオロギーにとどまるものではない、保守主義は出世の手段でもあり、金儲けの手段でもある。
「ヤツは塀の中だ。問題は終わったんだ。解決したんだよ」と、ワシントンの政界ではあしらわれているが。
アブラモフは80年代に共和党の学生団体「カレッジ・レパブリカンズ」の議長を務めた。同団体は毎年共和党から資金を与えられていた。
またアブラモフは70〜80年代にかけて政治的なダイレクトメールを方々に送って資金を得る。このダイレクトメールが、「やつらはパナマ運河を見捨てるつもりだ」とか金切り声で叫ぶジャンクメールだったとか。
で、そのダイレクトメールも、「資金が必要です」と締めくくられる。
もちろんそこで稼いだアブラモフ君は、80年代半ば、仲間と一緒に別グループを立ち上げ、さまざまな大会社から献金を受けて、キャンパスの左派を叩き始める。
ラルフ・ネーダーのグループ、PIRG公共利益調査グループがその標的になった。
このキャンパス・バトルは重要な意味を持ち、後に続くものたちのモデルになった。
ワシントンには今でもこれを生業にしている人たちがいる。
・80年代半ばの米国の右派は実にうぬぼれていて、自分たちのことを非常に優秀な人間だと考えていた。その彼らの思いついたことが、60年代の逆を行こう、ということ。
つまり60年代の異議申し立てのテクニックを使って60年代とは逆の方向に導こう、ということ。
その一つがレーガン・ドクトリンの形をとったゲリラ戦術を使う国外の右翼支援。
アフガニスタンのムジャヒディン、ニカラグアのコントラ、アンゴラのジョナス・サビンビ、モザンビーク民族抵抗運動……等々がその例。
*こうした右翼ゲリラ活動は、現在でも世界の安定に暗い影を落としてますね。
・80年代、アブラモフは国際自由基金IFFの設立に手を貸した。
IFFは独立系シンクタンクと宣伝されたが、実際は制裁措置と戦い、ネルソン・マンデラのアフリカ民族会議を弱体化させるために立ち上げられた、巧妙に仕立て上げられた南アフリカ軍のインテリジェンス作戦の一部だった。
手紙爆弾で反対派の指導者たちを殺傷したのもこのIFFの関係者。
米国の右派は、かつての南アフリカの体制をとても気に入っていた。
・保守派が目指した恒久政権
議席を勝ちとることで、いつまでも続く政権を目指すわけではない。
*ブッシュ氏の選挙参謀カール・ローブは、アメリカはそもそも文化として保守の国家なのだから、党はただ支持基盤を活気づけて、そのほかのグループもひとつふたつ巻き込めば、圧倒的多数は確実だと言っていたそうですが。
また選挙制度と選挙そのものをいじることでも恒久政権を意図したのかもしれません。
保守派の目指した恒久政権は議会の外で実現を図られてきた。
政権を恒久的なものにするために、ありとあらゆる仕組みを発展させてきたが、その一つが、連邦政府機能の大規模な外注と民営化。
政府の下で働いていた人たちは民間部門に移り、往々にして元同僚たちへのロビー活動を行ったり、以前と変わらない仕事をこなしたりする。ただ、給料を大幅に増やすためだけに。
官僚機構からの大規模な頭脳流出だ。
行政の機能をどんどん民営化していき、同時に公務員を叩いて安月給にすることで、先述の米国商工会議所会頭が述べた行政機能が有効に働かないような結果が得られるということでしょうか。
米国の民営化はそこまで行った?!
・恒久政権のために保守派が行った最も狡猾な仕組みが、赤字公債発行による赤字支出だ。
リベラルは何十年もの間、赤字公債をとても効果的に使ってきた。ケインズ主義者なら、不況脱出に使う道具の一つだ。
が、保守派は80年代に政権を取ってこの道具を手渡されたところで、赤字を積み上げた。
市民サービスが低下する一方で、赤字分として浪費されたものはいったいどこに消えたのでしょう?
多分、税として吸い上げられた国の財産、つまり国民の財産は、民営化された部門も含めて、産業界に流れたのではないでしょうか。
産業界といっても、財界に当たるところでしょうが。
共和党につながる企業、ハリバートン、KBR(ケロッグ・ブラウン&ルート社)、ブラックウォーター等々の戦争による不当利得で肥え太った企業にも、さぞかし流れたことでしょう。
結局、保守にとって政権を盗るとるのは金儲けのため? ということになるんでしょうか。
なお、このデモクラシー・ナウの話しの中でたびたび言及されるトーマス・フランクの2004年の著書What’s the Matter with Kansas? のレビューがこちらに載ってます。
「……こうした保守反動の背景を探ると保守派が経済問題にはいっさい 触れず、労働者のような格好をして道徳や宗教を語っては住民の心 を捉えていった戦略が見えてくる。さらに、科学者や弁護士など知 識層への反発を利用してリベラル派の民主党つぶしのプロパガンダ を行ったため、中絶反対や進化論禁止は住民運動にまで発展してい った。結果的に有権者は自分で自分の首を絞めているわけだが……」というように。
なお、この本は翻訳されていないものの、『保守がアメリカを食いつぶす』という仮題がつけられています。
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